■買手側Q&A

Q1、新規開業と医院継承のコストはどちらの方がコストを抑えられますか?

A1、一概には言えませんが、医院継承の場合、新規開業と比較して内装工事費用や医療機器購入費用、職員採用費用等はかかりませんが、営業権(のれん代)がかかります。営業権はクリニックの収益によって異なります。収益力が高く、盛業している案件ほど営業権の金額は高くなりますので、盛業している高収益なクリニックを医院継承する場合は、新規開業よりも開業コストが高くなることもあります。


 

Q2、新規開業と医院継承では開業までの時間はどれくらい変わりますか?

A2、新規開業では一般的に物件探しを始めてから開業まで1年から1年半程度かかります。物件が決まってから開業までには、内装プラン打ち合わせ及び医療機器選定に2~3か月、内装工事に2か月、職員採用及び研修に1か月、計6カ月程度かかります。
医院継承の場合は、内装工事や医療機器選定等を行う必要がないので、案件が決まってから約2か月~3か月程度で開業することができます。


 

Q3、個人事業と医療法人の継承は何か違うのですか?

A3、①個人クリニックを継承する場合
譲渡スキームは事業譲渡により医院継承します。保健所や厚生局、税務署等の行政手続きは廃止、新規の扱いとなり、開設管理者や保険医療機関コードが変わります。不動産賃貸借契約、リース契約の引継ぎは原則行わず、譲り受けるドクターが新たに契約を締結します。スタッフの雇用契約も引継がず、継続勤務するスタッフがいる場合は新たに雇用契約を取り交わします。
②医療法人を継承する場合
譲渡スキームは出資持分譲渡及び社員役員入れ替えにより医院継承します。理事長の変更が完了したら法務局へ変更登記申請を行います。行政手続きは、都道府県へ役員変更届と登記事項変更完了届を提出します。開設者(開設者は医療法人のため)及び保険医療機関コードは変わりません。不動産賃貸借契約やリース契約、雇用契約等の各種契約当事者は医療法人であるため、権利義務はそのまま引き継がれます。


 

Q4、リース契約などは全て引き継がないといけないのでしょうか?

A4、①個人クリニックを継承する場合
引継ぐ資産と負債を任意に選択することができます。よって不要な医療機器等のリース債務は引き継がない選択をすることが可能です。この場合、引き継がないリース債務は譲渡するドクターにおいて清算していただきます。
②医療法人を継承する場合
契約当事者は医療法人であるため、リース契約を含む各種契約の権利義務はそのまま引き継がれます。


 

Q5、スタッフは全て引き継ぐ必要があるのでしょうか?

A5、①個人クリニックを継承する場合
開設者が変わりますので、労働基準法上スタッフの雇用を引き継ぐ義務はありません。ただし譲渡するドクターが医院継承の条件としてスタッフの雇用引継ぎを希望されるケースもありますので、この場合はスタッフの雇用を引き継ぐことを前提として商談・交渉を行っていきます。
②医療法人を継承する場合
原則スタッフとの労働契約はそのまま引き継がれます。ただし給与水準の見直しを図りたい場合や引継ぐことが難しいスタッフがいる場合には、社会保険労務士に相談し、給与や勤務形態の見直しを行う、あるいは労働トラブルにならずに円満退社してもらえる方法を協議するといった対応を行います。


 

Q6、クリニック名称を変更したいのですが可能でしょうか?

A6、医院継承後、クリニックの名称を変更することは可能です。
①個人クリニックを継承する場合
保健所及び厚生局へ廃止、新規の手続きを行う際、譲り受けるドクターが新たな施設名称で開設届を提出することでクリニックの名称を変更することができます。
②医療法人を継承する場合
医療法人開設のクリニック名称を変更する場合は、都道府県へクリニック名称変更に関する定款変更申請を行います。都道府県からの定款変更認可後、保健所と厚生局へ変更届を提出してクリニックの名称を変更することができます。


 

Q7、医療法人の名称を変えることはできますか?

A7、医療法人の名称変更は可能です。医療法人名を変更する場合、都道府県に定款変更申請を行い、定款変更認可後、保健所と厚生局へ変更届を提出します。


 

Q8、医院継承は簿外債務などのリスクがあると聞きますがいかがでしょうか?

A8、①個人クリニックを継承する場合
引き継ぐ資産と債務を任意選択できるので、簿外債務を引き継ぐリスクはありません。職員への退職金支払い債務も個人事業の場合は雇用主が変わるため引き継ぐことはありません。
②医療法人を継承する場合
職員退職引当金や未払い賞与、未払残業代等の簿外債務を引き継ぐリスクがありますので、会計士、税理士等の専門家によるデューデリジェンスを実施して、簿外債務リスクの確認を行います。


 

Q9、医院継承は前院長の悪い評判も引き継いでしまうと聞いたことがあります。

A9、新規開業と違い、医院継承の場合は、良い評判、悪い評判のいずれも引き継ぐと考えた方が良いでしょう。ただインターネットの口コミサイトなどの評判よりも重視すべき点は、クリニックの売上、利益、患者数です。例えばインターネットで悪い口コミがあっても、実際に多くの患者が来院しているクリニックはそれだけ患者の信頼を得ていると考えられます。悪い評判の口コミは一部の患者あるいは競合先が投稿しているかもしれません。クリニックの経営内容を見れば患者に支持されているクリニックか否か判断することができます。


 

Q10、良い案件と悪い案件はどのように判断すれば良いでしょうか?

A10、
①良い継承案件
固定患者がついており、利益が出ていて、譲渡理由が「体力的な衰え」や、「患者が困るので引き継いでほしい」など明確であることです。仮に売上が下がっていたとしても、譲渡する院長の体調等の理由により診療時間を減らしているなど理由が明確で、医院継承した後に改善する方法が明確な場合は良い案件だと言えます。
②悪い継承案件
患者が少なく、利益が出ていなく、譲渡理由が、「利益が出ないのでクリニックを第三者へ譲渡してまた別の場所で開業したい」など経営不振による譲渡案件は良い案件とは言えません。なぜならば患者を引継ぐことで開業当初から十分な利益を見込めることが医院継承の最大のメリットであり、利益が出ていないクリニックはそもそも医院継承するメリットがありません。


 

Q11、診療科目の変更や追加は可能でしょうか?

A11、診療科目の追加及び変更は、保健所へ変更届を提出することにより可能です。


 

Q12、引継ぎ期間はどのくらいかかりますか?

A12、医院継承における引継ぎ期間は案件によって異なりますが、最終譲渡契約締結後、譲り受けるドクターが経営権移譲前1か月程度非常勤として診療に入り、譲渡したドクターが経営権移譲後1か月程度非常勤として診療に入り、計2か月程度は引継ぎを行うことでスムーズな経営移行ができると考えます。


 

Q13、医院継承の費用はどれくらいかかりますか?

A13、医院継承に必要な費用は、譲渡価格に加え、仲介会社への成功報酬として譲渡価格の5%~10%(仲介会社により手数料は異なります)、賃貸借契約にかかる費用(敷金・礼金・仲介手数料・前家賃等)、運転資金3か月程度、行政申請手続き費用として10万~25万円程度の費用が掛かります。ただし医療法人の主たる事務所を移転し、新たなクリニックを開設するなど医療法人の定款変更を行う場合は、100万円~150万円程度の行政申請手続き費用がかかります。
例)譲渡価格6000万円、賃料50万円(敷3か月、礼1か月)のクリニックを医院継承する場合
譲渡価格6,480万円(税込)+成功報酬324万円(税込)+賃貸借契約費用300万円(敷3、礼1、仲手1、前家賃1)+運転資金1,000万円+行政書士費用20万円=8,124万円となります。


 

Q14、前院長が医師会へ加入していた場合、医師会へ加入する必要はありますか?

A14、譲り受けるドクターの医師会加入は任意のため加入しなくても構いません。
ただし自治体の健診や予防接種の売上構成比率が大きいクリニックを医院継承する場合、医師会に加入していないと自治体の健診や予防接種を受託できない自治体が多いので、自治体の健診受託を継続される場合は医師会へ加入する必要があります。


 

Q15、過去の医療トラブルが問題となった場合、責任の所在はどうなりますか?

A15、譲渡契約書において、経営権譲渡前の診療行為に起因する医療訴訟については譲渡するドクターが責任を負い、経営権移譲後の診療行為に起因する医療訴訟については譲り受けるドクターが責任を負うという条項を定めることにより責任の所在を明確にします。これは医療事故に限らず職員との労務トラブル等においても同様です。


 

Q16、職員への退職金支払いはどのように行うのでしょうか?

A16、①個人クリニックの場合
事業主(雇用主)が変わりますので、譲り受けるドクターが職員へ退職金を支払う必要はありません。職員へ退職金を支給する場合は、譲渡するドクターが退職金を支払います。これは職員を継続雇用する場合であっても変わりません。
②医療法人の場合
医療法人の貸借対照表上に退職引当金が計上されていない場合、経営権移譲時の退職金相当額を引当金として債務計上し、経営権移譲後、将来職員が退職する際に医療法人から退職金を支払います。