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クリニックM&Aでよく聞く「のれん代」とは?

  • 医療継承コラム

こんにちは。メディカルプラスです。
今回は、クリニックM&Aにおける「のれん代(営業権)」についてお伝えいたします。のれん代については、M&Aにおいて非常に重要な要素ですので、簿記会計の概念が絡む内容ですが、できる限りかみ砕いて説明いたしますのでぜひ最後までお読みください。本コラムがクリニックM&Aを検討されている方にお役に立てればと思います。

のれんの語源

そもそも「のれん」とは一体何なのでしょうか?
「のれん」とは、会計用語の一種ですが、その語源はお店の軒先にかけられている「暖簾(のれん)」といわれています。暖簾には、一般的にお店の名前である屋号が印字されます。そしてこの屋号は、消費者に対して潜在的に働きかけるパワー、つまりそのお店の信用力やブランド力を表す看板ともいえます。
クリニックM&Aで使われる「のれん」という言葉も、そのクリニックが積み重ねてきた信頼やブランド力、収益力などといった、目には見えない無形の資産を指します。

のれん代の正体

では具体的なご説明に移りましょう。
そもそもM&Aを検討する際、財務諸表を細かくチェックされると思います。この財務諸表の貸借対照表には資産の部がありますが、資産とは会計学用語として「個人や組織などの報告主体に帰属し、将来的に収益を獲得する経済的能力」と定義されています。たとえば、固定資産は利用することで将来の収益の獲得に間接的に後継しますし、売掛金などの金銭債権は現金に対する請求権をあらわします。このように、貸借対照表の資産の部を見れば、企業の収益がどのように生まれ、また将来的にどのような状況になっていくのかを、分析することができるのです。

しかしながら、貸借対照表に企業すべての収益を獲得する能力が計上されているかというと、そういうわけでもありません。たとえばクリニックの場合、医院に対する良い評判(口コミなど)は、間違いなく企業の収益獲得に貢献していますが、これは金銭的に評価することができませんから、貸借対照表に計上されることはありません。また、笑顔にあふれた明るいスタッフや病院の雰囲気なども、間違いなく集患に貢献していますが、人的資源は報告主体に帰属しませんから、これも貸借対照表に計上されることはないのです。これ以外にも、クリニック所在地の利便性や、クリニックの知名度、集患の実績なども、医院の収益力に影響を及ぼしますが、やはり貸借対照表には計上されていません。

このように貸借対照表には計上されていない項目であるものの、企業の収益獲得に貢献する無形資産も企業の収益性や将来価値を分析する上で重要な項目となります。この無形資産を金銭的に評価したものが今回ご説明する「のれん代」の正体です。

クリニックM&Aにおけるのれん代の算出について

先ほどのれん代について詳細にご説明いたしましたが、これを一言でいえば『超過収益力』のことを指します。のれん代は無形資産であることから、客観的な根拠によって算出することは難しいというのが現実です。
一般的にクリニックM&Aの場合、損益計算書にある営業利益をそのままのれん代として用いることは少なく、直近1~3年間の営業利益をもとに、いくつかの調整項目を考慮のうえ算出されます。調整項目の実例としては、例えば大規模修繕費などの一時的な費用やクリニックの経営にあまり関わりのない接待交際費などのプライベートな費用、現在の役員・家族への報酬などが挙げられます。減価償却費も経費計上のみで実態の支出はありませんから、のれん代算出の際は差戻しされます。

M&Aの譲渡価格算出方法とは

次に譲渡価格の算出についてご説明いたします。クリニックM&Aの譲渡価格の算出方法をご説明するにあたり、まずは一般的なM&Aの際の譲渡価格算出方法をご紹介いたします。主に大きく分けて次の3つの方法があります。

DCF法(インカムアプローチ) 評価対象事業から将来得られると期待されるキャッシュフローを現在価値に割り引いて算出する方法です。
類似会社比較法(マーケットアプローチ) 評価対象事業と類似する上場企業を複数選定し、数値の中央値から倍率計算をして評価対象事業の株式価値を算出する方法です。
時価純資産法(コストアプローチ) 評価対象事業の資産負債を時価評価して株式価値を算出する方法です。

それぞれの特徴をご説明いたします。

■DCF法(インカムアプローチ)

理論的な評価を行うことができるという特徴があり、実務上でも広く使われています。
しかし割引率の設定や将来得られると期待されるキャッシュフローを正確に見積もることは容易ではなく、事業計画の精度によって評価結果に大きな差が開いてしまうこともあるため、注意が必要です。

■類似会社比較法(マーケットアプローチ)

類似した上場企業を基準とするため、客観性が高い方法です。しかし類似した上場企業の選定が難しいため、小規模な会社の株式評価や類似する企業が無い場合には適しません。

■時価純資産法(コストアプローチ)

評価対象の過去の実績をベースに算出することから将来の事業計画の影響を受けないため、客観的な評価を行うことが可能です。その反面、将来的な収益力が株式価値に反映されません。

上記3手法のうちDCF法(インカムアプローチ)は、一般的に大企業で将来の収益の見込みがかなり合理的に予想できる事業などの場合に用いられ、中小・中堅規模のM&Aではあまり用いられません。また、類似会社比較法(マーケット・アプローチ)は、一般的に中小規模の事業会社のM&Aにおいては利用されることが多いのですが、医療法人の場合は、比較対象となる上場企業が存在しないため、使いにくい方法となります。そのため、クリニックのM&Aの譲渡価格算出では時価純資産法(コストアプローチ)が使用されることが少なくありません。

医療法人出資持分の評価方法について

のれん代は譲渡対価に大きく影響

ではクリニックM&Aの際の譲渡価格算出についてお伝えしていきましょう。
先ほどクリニックのM&Aでは時価純資産法(コストアプローチ)を用いるとご説明いたしましたが、そのままの算出ですと将来的な収益力が反映されないため、のれん代を加えた価格が譲渡価格となります。具体的にご説明すると、個人開業クリニックの場合は『譲渡価格=固定資産+のれん代』となり、医療法人の場合は『譲渡価格=時価純資産+のれん代』となります。ここでの「固定資産」とは、クリニックの内装や医療機器のことを指し、実際の取引では固定資産台帳の簿価ではなく譲渡時の時価額に評価し直して価格を決めるケースが多いです。また「純資産」とは、現金や不動産などの「資産」から、借入金などの「負債」を差し引いた差額のことで、医療法人の決算書の貸借対照表における「純資産の部」の金額が該当します。
つまり、クリニックM&Aを考える上では、貸借対照表のみならず、のれん代についても考えてみることで、理想的な取引を行うことが可能になるということです。

最終的な譲渡価格は売主と買主双方の意向のもと決定

ここまでの説明で、M&Aを検討しているクリニックの収益力や将来価値を判断する上で、のれん代の存在がいかに重要となるかお判りいただけたのではないかと思います。
しかし、のれん代評価はあくまで「目安」としておこなうものです。実際の譲渡価額は、売主と買主双方のそれぞれの事情や意向を踏まえ、両者の合意により決定されます。たとえば、売主が何らかの事情により急いで確実に譲渡したいと考えていれば、のれん代を一般的な価格よりも下げて後継者探索をすることもありますし、逆に、特に急がないので多少のれん代を高めの評価にし、時間を掛けて探す、という場合もあります。

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