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継承後の前院長の継続勤務は必要か?

  • 医療継承コラム

本日は「医院継承後の前院長の継続勤務は必要か?」というテーマについてお伝えしたいと思います。
はじめにお断りしておく必要があるのは、各案件によって売手、買手の考え方や、譲渡理由など背景が異なりますので、当コラムでお伝えする内容は、あくまで一つの事例および考え方であることをご理解ください。
今回このテーマを取り上げたのは、医院継承の後継者となる買手医師の方より、前院長に非常勤として残ってもらうべきかどうか悩んでいる。という相談を受けることが多いためです。

医院継承後に前院長が継続勤務するケースは多い

実際、体調不良などで継続勤務が難しいケースを除き、売手である前院長が医院継承後に継続勤務するケースは多く、当社が仲介させていただいた案件の6割~7割割程度のクリニックでは医院継承後も一定期間、前院長が非常勤として継続勤務しています。前院長が譲渡後に自ら継続勤務を希望されるというケースは少なく、後継医師からの要望があれば、少しの間、非常勤として引き継ぎ協力します。というスタンスの方が多いようです。

後継医師が前院長に継続勤務してもらうか否か迷うのは、前院長が残っていると自身が気を遣ってしまう、職員への影響力が残りやりづらい、患者さんが前院長の診療に集中してしまう、コストがかかるなどの理由があげられます。実際のところはどうかと問われれば、その通りだと思います。一方、視点を変えて前院長に残ってもらうメリットについて考えてみましょう。前院長に残ってもらう最大のメリットは、医院継承を成功させるうえで最も大事である「患者さんを減らさない」という点だと思います。

もっとも前院長が医院継承後に継続勤務しない場合であっても、継承する前に後継者となる買手医師が非常勤として勤務したり、前院長の診療を見学したり、あるいはオリエンテーションやサマリーなどで引継ぎを行いますので、継承後、大幅に患者さんが減ってしまうことはほとんどないと思いますが、患者さんにとっては週1日でも前院長の診療日があるというのは安心です。

前院長が半年、1年あるいはそれ以上継続勤務されるようなケースでは、後継院長が外来診療を行い、前院長が内視鏡をやるといった役割分担や、後継院長が一般精神科、前院長が児童精神科を診療するなどといった役割分担をされるケースもあります。また、患者さんに継続して来院してもらうという観点では、新たに非常勤医師を雇用するよりも前院長に継続勤務してもらう方が効果が大きいのは皆さんにもご理解いただけると思います。

継続勤務のデメリットは?

一方、前院長が継続するデメリットについても考えていきたいと思います。まず前院長への給与コストについては様々な考えがあると思いますが、前述のように患者さんの来院継続や役割分担により売上維持、増収に繋がるのであれば、かかるコストは十分もしくはそれ以上の価値があるのではないかと思います。

続いて、患者さんや職員への影響力が残ってしまうという点では、前院長の人柄や性格にもよりますが、稀に今までのやり方以外の方針をなかなか受け入れてもらえないというケースがあるようです。前院長と後継院長の方針が違うと、職員も患者さんもどうすればよいか困ってしまいます。経営権は既に後継院長に移っていますので、方針の決定は後継院長が行いますが、長年前院長との間で築かれた人間関係はそう簡単に変えることはできないものです。しかし、こうしたケースは稀であり、ほとんどの案件ではスムーズに引継ぎが行われており、前院長の体力気力が続く限り、残ってほしいと後継院長から依頼されるケースもあります。

ここまで少し極端なケースも含め、継承後の前院長の継続勤務についてお伝えしてきましたが、平均的な引継ぎ期間としては、後継院長が診療に慣れ、職員との人間関係もできてきて、患者さんも一巡した頃の目安である、2か月~3か月を目途に非常勤勤務を終えるというケースが多いかと思います。

医療機器入れ替え、電子カルテ導入時期について

最後に前院長の引継ぎ期間と医療機器の入れ替え時期についても少し触れておきたいと思います。例えば、継承するクリニックで導入している医療機器が古いため、継承後に買い替えたり、紙カルテから電子カルテを導入したり、古くなった水回りや内装の改修工事をしたりすることがあります。これを継承するタイミングで一気にやってしまいたいとお考えの方もおられると思いますが、これを一気にやるとなると一定期間休診する必要が生じます。

特に個人開設のクリニックを継承する場合は、診療報酬の遡及請求が必要になりますが、厚生局に遡及請求の申請をするうえでも、診療が途切れないことが大切です。診療報酬の遡及請求については以下のコラムで詳しく触れておりますのでよろしければご覧ください。

個人と医療法人の開設形態による医院継承実務上の違いについて

あと前院長に継続勤務してもらう場合かつ継承後に電子カルテの導入を行う場合は、導入時期について検討する必要があります。今まで紙カルテで診療してきた前院長に明日から電子カルテでお願いします。というわけにもいきません。継承後に電子カルテの導入を検討される場合は前院長の継続勤務が終わるタイミングで導入する、もしくは新たに医療クラークを雇用するなどの対応をされるのがよろしいのではないかと思います。

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