M&Aでよく聞く「ネームクリア」とは? ~プロが重要性を分かりやすく解説!~

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こんにちは。メディカルプラスです。今回の記事では「ネームクリア」についてお伝えいたします。クリニック継承やM&Aを検討されたことのある方であれば、一度くらいは耳にしたことがある言葉なのではないでしょうか。今回はこの「ネームクリア」という言葉が持つ意味とそのフェーズについて、解説してまいります。クリニックM&Aを検討されている方のご参考になりますと幸いです。
ネームクリアの言葉の意味とその目的
「ネームクリア」(英語:Name clear)という言葉は、「相手先に自身の情報を明かすこと」という意味を持ちます。これがM&Aの場合ですと、「買手候補者に対して売手の詳細情報を開示する」という意味で使われています。
ネームクリアの主な目的は、情報漏洩の防止です。継承を進めるにおいて、売手側の情報の取り扱いには非常に注意が必要です。例えば、契約前に売却を検討している事実が噂として広まってしまうと、従業員の離職や患者の減少という経営の根幹を揺るがす影響を及ぼしかねません。一方で買手側は、譲渡案件の詳細情報を知らなければ具体的に検討することができません。そこで「ネームクリア」といったフェーズが重要になるのです。ネームクリアをすることで、売手側は不必要な情報拡散を防ぎつつより前向きに継承を検討していただける買手のみに情報を伝えることができ、対して買手側は詳細情報を知れることでその案件を具体的に検討することができます。
一般的なネームクリアの流れとは
では、一般的にはどのような流れでネームクリアは進んでいくのでしょうか。
簡単な流れは以下の通りです。
案件を検討し始める際に買手側はまず、ノンネームシート(NN:Non Name)といったA4サイズ1枚程度の案件の匿名情報のみが記載された資料をもとに検討をします。その匿名情報より更に詳細情報をもとに案件の検討をご希望された場合には、まず買手側と仲介会社間での秘密保持契約の締結が必要となります。買手側は売手側の詳細情報(=個人情報)を受け取るわけですからその情報の漏洩を防ぐため、また、ネームクリアに際して買手側は仲介会社に自身のプロフィールを共有しますので、買手自身の個人情報漏洩を防ぐといった意味でも秘密保持契約の締結は必須となるわけです。
秘密保持契約の締結後、買手側は自身のプロフィールを、仲介会社を通して売手側に提出してネームクリア希望の旨を伝え、情報開示の判断を仰ぎます。プロフィールとは例えば個人医師であれば、氏名・年齢・ご専門・現在のご勤務先などが挙げられます。医療法人であれば、法人名・法人規模・事業内容などが売手側にお伝えするプロフィールとなります。もちろん売手側と仲介会社間でも秘密保持契約を締結しておりますため、売手側から買手側の個人情報や継承を考えているなどの情報漏洩の心配はありません。
売手側にネームクリアのご承諾をいただけましたら、クリニック名や住所などの詳細情報がまとめられた案件概要書(IM:Information Memorandum)をもとに、案件の分析をするフェーズになります。ここでトップ面談やクリニック現地見学に進まれるか否か、つまり継続検討が可能か否かをご判断いただきます。
ノンネームシートには案件が特定されない程度の情報が記載されている
案件の初期検討段階では、ノンネームシート(NN:Non Name)に記載された匿名情報をもとに検討していただくと前述いたしましたが、では具体的にはどのような内容が記載されているのでしょうか。
ノンネームシートには一般的に、以下のような情報が記載されています。
●診療科目
●立地(※都道府県もしくはエリア単位)
●売上規模
●修正後利益
●譲渡価格
●譲渡希望時期
●譲渡スキーム
●その他案件の特徴やセールスポイント
ノンネームシートは、秘密保持契約が締結されていない相手やHP等の不特定多数の相手に開示し、初期検討可能な候補者を広く探索するために使われます。そのため、例えば最寄り駅のような、案件が特定される可能性のある情報は一切記載されていません。ノンネームシートの項目は売手側の希望をもとに作成されており、匿名情報の内容についても売手側の最終判断の上で記載されています。そのため、ノンネームシート以上の情報は基本的にはネームクリアをしない限り知ることはできません。
ネームクリア時の注意点
ここまでネームクリアやその前後の流れについてご説明してきましたが、ネームクリアの際に注意しなければならないことがあります。それは、必ずしも売手側に情報開示の承諾がいただけるわけではないということです。
例えば、買手側の臨床経験や年齢、開業可能時期、継承後の方針、個人医師あるいは医療法人等(後継者は個人医師限定等)の理由によりネームクリアにご承諾いただけないケースがあります。また、既に他候補者と基本合意契約を締結し、優先交渉期間に入っているためネームクリアにご承諾いただけないというケースも有り得ます。売手側からネームクリアにご承諾いただけない場合はそれ以上商談を進めることはできませんので、その案件は諦めざるを得ません。
また、売手側からネームクリアの承諾を得たとしても、それはあくまで詳細情報の開示にご承諾いただけただけに過ぎません。この段階では継承の実行に関して何かしらの約束がされるわけではなく、その義務もありません。そのため、ネームクリア後の買手側の検討や売手側と買手側双方の交渉の結果、継承が破談となることも多々あります。
ネームクリアは双方の思いが伝わる最初の場
ネームクリアとは単なる詳細情報の開示、と捉えられがちですが、ネームクリアによって破談になってしまったり、情報漏洩によって賠償責任が生じたりする可能性もあります。M&Aにおいてはどのプロセスも非常に重要ですが、ネームクリアも重要なフェーズとして捉え、行動いただくと良いでしょう。
またネームクリアをすることで、買手側は詳細情報を知ることができるだけでなく、自身の継承の意志を売手側にアピールすることができます。一方で売手側は自身が承諾した相手以外には詳細情報が伝わらないため、安心して継承活動を進めることができます。さらに言えば、後継者候補として商談を進めたいという逆アピールができます。そういった意味合いから、ネームクリアは双方の想いを伝えあう最初の機会とも捉え、是非ネームクリアの際にはご自身の想いを売手側にお伝えいただくことをおすすめいたします。
ネームクリアも含めた医院継承・M&Aの全体の大まかな流れと、フェーズごとに必要とされる期間については、下記記事でご案内しています。ぜひこちらもご参考ください。
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