医療法人の数は今、全国で何件?【2025年版】~持分あり・なしの推移と内訳~

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こんにちは。医院継承・クリニックM&A支援のメディカルプラスです。「医療法人は全国にどのくらいあるのか?」。一見シンプルな問いですが、実際には全体数だけでなく「持分あり・なし」の割合や、それぞれの年次推移まで常時把握するのは容易ではありません。本記事では、厚生労働省の最新データをもとに、医療法人の全体件数や種類別、その内訳、持分あり・なしの件数推移までを整理してご紹介します。先生方がクリニックのこれからを考える際に役立つようまとめました。ぜひご一読いただき、ご参考いただけますと幸いです。
医療法人は全国に何件ある?【2025年最新データ】
厚生労働省「種類別医療法人数の年次推移」によると、全国の医療法人は2025年(令和7年)時点で59,043件にのぼります。1985年(昭和60年)にはおよそ6,000件程度でしたから、この40年間で約10倍に増加したことになります。
特に増加が顕著だったのは平成期以降です。高齢化の進展や医療ニーズの多様化を背景に、診療所の法人化が進み、医療法人は地域医療を支える主要な枠組みとして定着しました。個人開業のままでは難しい規模拡大や分院展開も、法人化によって可能となり、数の伸びにつながったと考えられます。この約6万件にも届きそうな医療法人ですが、どのような内訳になっているのでしょうか。ここからは「持分あり」と「持分なし」の違いとその推移について見ていきます。
持分あり・なし別に見る医療法人数の推移
医療法人は大きく「社団法人」と「財団法人」に分かれますが、大多数は社団法人です。その社団医療法人は、「出資した人が解散時に財産を分けられる権利(=持分)」の有無によって「出資持分あり」と「出資持分なし」に分類されます。ざっくり言えば、持分とは「法人に対する財産権」のことです(社団・財団という種類別については次章を参照)。
●出資持分あり法人:
出資額に応じて持分を持ち、解散時に残余財産の分配を受けられる。
●出資持分なし法人:
出資に応じた持分がなく、解散時に残余財産が分配されない仕組み。
かつては持分あり法人が大多数を占めていましたが、2007年(平成19年)の医療法改正で新設が認められなくなりました。そのため、以降は持分なし法人の新設が増え、件数は年々拡大しています。2025年(令和7年)時点では社団医療法人全体で58,669件。内訳は、持分あり法人が36,928件(約62%)、持分なし法人が22,115件(約37%)です。全国の医療法人(59,043件)のうち、99%以上が社団医療法人であり、残りは財団法人です。したがって「持分あり/なしの推移」は、ほぼ社団医療法人の動きを示していると考えて差し支えありません。
推移が分かりやすいよう、厚生労働省統計「種類別医療法人の年次推移」をもとに、折れ線グラフにしてみました。持分あり法人は2007年を境に減少に転じ、反対に持分なし法人が増加に転じたことがお分かりいただけると思います。

これは制度改正の影響を直接的に示すもので、今後の医院継承や相続を考えるうえで重要な背景といえるでしょう。なぜなら、持分あり法人は相続財産として課税や分配の問題が生じやすく、後継者への継承も金銭的な負担を伴うからです。一方、持分なし法人はこうしたリスクが少なく、スムーズな継承につながります。そのため、件数推移の変化は単なる統計の動きにとどまらず、先生方の意思決定に直結する要素としてお考えいただければと思います。
*出典:厚生労働省統計「種類別医療法人の年次推移」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001505575.pdf
医療法人数の推移を理解するうえでは「持分あり/なし」の違いが中心となりますが、そもそも医療法人には種類があることも、あらためて振り返りましょう。全体像がよりクリアになると思いますので、次章ではその種類別の内訳についてご説明いたします。
種類別(社団・財団)に見る医療法人の内訳
ここまでの章でも触れましたとおり、医療法人は大きく「社団法人」と「財団法人」のいずれかに分類されます(医療法第39条)。ただし、2025年(令和7年)時点で全国に59,043件ある医療法人のうち、99%以上が社団法人であり、財団法人はごく少数にとどまります。「社団医療法人」は医師や関係者が出資し合って設立される形態の法人です。医院継承やM&Aで議論される医療法人は、ほぼすべてがこのタイプです。そして「財団医療法人」は財産の寄付をもとに設立される形態で、歴史的に設立された法人が多く、新規設立はほぼ見られません。

このように法律上は2種類に分かれますが、実務で先生方が関わるのはほぼ社団医療法人です。この内訳を押さえておくことで、「自分に関係するのはどちらか」を切り分けながら件数や推移を理解できるようになります。とくに医院継承やM&Aを検討する際には、社団医療法人の中で「持分あり/なし」が最大の判断ポイントになる、という流れで理解いただければと思います。
持分なし医療法人への移行が進みにくい背景
2007年(平成19年)の医療法改正により、持分あり法人の新設は認められなくなりました。しかし、既存の法人が持分なしへ移行する動きは思ったほど進んでいません。背景にはいくつかの事情があります。まず創業者である理事長が「自ら出資して築いた財産権を放棄しなければならないのか…」と考え、移行に難色を示すケースも少なくありません。また、一人医師医療法人が全体の8割以上を占めるため、出資者=理事長本人という構造になりやすく、払い戻し請求リスクを自分でコントロールできることから「移行の必要性を感じにくい」という現実もあります。
一方で、相続の局面では状況が一変します。持分あり法人では持分が相続財産とみなされ課税対象となり、後継者が多額の相続税負担を背負うことがあります。特に純資産の多い法人では、不動産や医療機器といった現金化しにくい資産が中心であるため、納税資金の確保に苦慮する例も珍しくありません。このように、件数推移は単なる統計の話ではなく、先生方が医院継承や相続を考える際の重要な判断材料といえるでしょう。「なぜ移行が進まないのか」「持分あり・なしのどちらが有利か」といった実務的な判断については、以下 でも詳しく解説しています。さらに深掘りしたい先生は、ぜひご参照ください。
まとめ:医療法人の数・内訳・推移を継承の判断材料に
ここまで、全国の医療法人の件数推移、持分あり・なしの内訳、そして種類別の状況を整理してきました。最新データをもとに全体像を押さえることは、先生方が今後クリニックをどう継承するか、あるいは法人化を検討するかといった場面での判断材料となります。特に「持分あり/なし」の違いは、相続やM&Aの際に負担や選択肢を大きく左右する要素です。件数推移から見えてくる制度の流れを理解しておくことで、将来の備えに直結する具体的な検討が可能になります。
また、平成29年度の税制改正で創設された「新認定医療法人制度」では、一定の要件を満たして持分なし医療法人へ移行する場合に、相続税や贈与税の優遇措置を受けられる仕組みが設けられています。すべての法人に適用されるわけではありませんが、そもそもの制度改正の背景からあらためて把握したうえで、移行を検討する際の選択肢として知っておくと安心です。
件数や推移の理解を入口に、後継者問題への備えや、M&Aを含むクリニックの将来戦略をどう描くかという実務判断にぜひつなげていただければと思います。その際は必ず専門家に相談し、それぞれの法人の状況に応じた最適な道を選ばれることをおすすめします。
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この記事の著者

豊島 太郎(とよしま たろう)
株式会社メディカルプラス コンサルティング営業本部 医院継承事業部 リーダー
豊富な業界経験に加え二級建築士の資格を持ち、クリニックの内装やインテリア関連の知識にも明るい多才なアドバイザー。建設不動産関連業務を約7年経験、その中で人それぞれの人生とその大切さについて深く考える出来事を多く経験。メディカルプラス参加後は5年間で約40件以上の継承に立ち会い、医師の人生のターニングポイントに立ち会うやりがいを原動力にサポートを行う。穏やかな物腰と優れた傾聴力に社内外から定評あり。
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