テナントで借りているクリニックでも、継承することは可能?

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こんにちは。メディカルプラスです。
本日は「テナントで開業しているクリニックの継承」についてお伝えいたします。テナント開業をしているために譲渡できるか不安を抱えているクリニック経営者の方や、初期投資を抑えたいとの考えからテナント開業のクリニック継承案件をお探しの方は多いのではないでしょうか。本コラムでは、テナント開業のクリニックをスムーズに継承するための準備や、注意点、賃貸借契約の引継方法についてご説明して参ります。是非最後までお読みください。本コラムがクリニックM&Aを検討されている方にお役に立てましたら幸いです。
テナント開業のクリニックの継承について
「自己所有不動産でのクリニックでないと、継承がスムーズに進まないのではないか?」とお考えの方は譲渡側(売主側)譲受側(買主側)問わず一定数いらっしゃるようにお見受けしております。しかし実際はテナント開業のクリニックも、条件さえ整っていればスムーズに継承を進めることができますのでご安心ください。
ではスムーズに継承を進めるための条件とはどのようなものでしょうか。
それは、賃貸借契約書の内容をあらかじめよく確認しておくことです。賃貸借契約書によっては、現在の経営者だからこその条件になっている場合や、解除条項に抵触(経営者の変更、賃借権の譲渡等)する場合もあります。また、定期借家契約の場合、契約期間の残存期間が僅かになっている場合や期間途中解約時に多額の違約金が発生する場合が考えられます。
そのため、譲渡側(売主側)は募集前に、譲受側(買主側)は基本合意契約締結前に賃貸借契約書の内容を確認しましょう。もしも賃貸借契約書について不明点がある場合は担当アドバイザーに是非ご相談してみてください。
オーナーの承諾が必要不可欠
スムーズに継承についての商談が進み、譲渡側(売主側)と譲受側(買主側)双方の合意形成が取れた際にすべき事項として、オーナーから継承についての承諾を取ることが挙げられます。オーナーに承諾を得られない場合、いくら当事者同士で合意形成が出来ていても、継承を進めることは非常に困難です。とはいえ、継承を内密に進めたいと考える譲渡側(売主側)も少なくありません。その場合には、どのタイミングでオーナーに確認を取ればよいか、事前にアドバイザーに相談されることをおすすめいたします。
また、譲渡側(売主側)であらかじめオーナーに継承の承諾を取っていた場合でも、オーナーが高齢や病気等の理由により、その家族や親族に相続・贈与が発生した場合は、その承諾が覆されるケースも有り得ますそのため、あらかじめ承諾を得る場合は、書面に残しておくなど、承諾を得たと証明できる用意をしておくと良いでしょう。
譲渡側(売主側)譲受側(買主側)双方で継承についての最終契約が締結されましたら、譲渡側(売主側)からの顔つなぎや、オーナー・譲渡側(売主側)・譲受側(買主側)の三者間での協議の場を持つなど、譲渡側(売主側)の協力があると、その後の賃貸借契約の引継ぎも、よりスムーズに進みやすくなる傾向がありますので、譲渡側(売主側)となる皆様は是非ご参考ください。
賃貸借契約書の引継ぎ方法3パターン
オーナーにも継承の承諾を得られましたら、いよいよ賃貸借契約書の引継ぎに入ります。賃貸借契約書の引継方法には主に3パターン考えられます。
【パターン1】名義変更
これは、「現行の賃貸借契約書の借主部分の名義を、譲渡側(売主側)から譲受側(買主側)に変更する方法」です。現行の賃貸借契約書の内容をそのまま引き継ぐことになりますので、契約書内容の調整に時間がかからず、比較的短期間での手続き完了が可能です。条件を引継ぐだけでなく、ほとんどのケースで賃借料の変更も発生せずそのまま引き継ぐことになりますので、昨今の賃借料相場の値上げを踏まえると、譲受側(買主側)にとってはメリットとなるでしょう。ただし、保証人の変更手続きや、現行の賃貸借契約の残存期間が少ない場合は近い将来更新の手間がかかるというデメリットについて意識しておかなくてはなりません。
また、名義変更の場合は現行の賃貸借契約が生きている状態となりますので、テナントオーナーから売主に敷金・保証金の返金はされません。そのため、原則として敷金・保証金の返還なども、テナントオーナーを介することなく譲渡側(売主側)と譲受側(買主側)の双方で個別にやりとりするよう求められることがほとんどとなります。この際、譲渡側(売主側)・譲受側(買主側)・テナントオーナーの三者間で敷金・保証金の返還請求権の移行を記載した三者間契約を締結するなどの手間がかかります。
【パターン2】新規契約
これは、「現行の賃貸借契約書は引き継がず、テナントオーナーと譲受側(買主側)で新たな賃貸借契約を締結する方法」です。現行の賃貸借契約内容が数十年前に初回契約したものであり、時代に即さない内容の場合等は、名義変更でなく新規契約で締結した方が良いケースもあります。
新規契約の場合、現行の賃貸借契約は解約となりますので、テナントオーナーから譲渡側(売主側)に敷金・保証金が返還され、譲受側(買主側)はテナントオーナーに直接敷金・保証金を支払うことになります。また、礼金や仲介手数料等が発生する恐れや、賃料や契約期間を始めとする様々な条件を一から見直されることになりますので、賃料の大幅な見直しや契約の種類(普通借家・定期借家)の見直し、解約時の原状回復費用の負担などが変更されるケースもあります。そのため新規契約の際には、より一層契約書内容を確認することを強くおススメいたします。
【パターン3】契約継続
これは、「現行の賃貸借契約が、名義変更もなくそのまま継続される方法」です。医療法人の継承の場合は形式上代表者が変わるといった形です。したがいまして、賃貸借契約の当事者である医療法人は変わりませんので、この方法が当てはまります。
契約継続は、現行の賃貸借契約がそのまま引き継がれますので、賃貸料・契約期間といった賃貸条件は原則そのままとなります。また、テナントオーナーから敷金・保証金が返還されることはありません。このように名義変更や新規契約と比較すると事務手続きとしてはそれほど多くありませんが、譲渡側(売主側)やその関係者がテナントの保証人となっていた場合については、譲渡側(買主側)に保証人の切り替えをする事務手続きが発生します。
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