開業希望エリアを限定しすぎない
通勤のしやすさ、立地のブランドなどの要素から、クリニックが多い競争過多の都心エリアで開業を希望する方も多いです。しかし都心エリアは家賃や人件費の負担も重く、多額の資金を投資して新規開業しても、競合医院と明確な差別化が図れていない場合、開業後の立ち上がりに苦労するケースが多いようです。
また、東京都(一部区)、大阪府(一部)、福岡県(一部)など外来医師多数地域(第28回医師需給分科会の外来医師偏差指標のデータより)に指定されたエリアでは、新規開設者に対して、地域で不足する外来医療機能を担うことを求められ、こうしたエリアで新規開業する際のハードルは上がっています。
一方、郊外で開設しているクリニックのなかには、交通の便があまり良くないエリアに立地する反面、競合医院が少なく、がかかりつけ医として地域に根ざし安定した収益を得ているクリニックもあります。開業エリアを限定せずに、自身の診療方針と合う盛業クリニックを継承する事で、より早く安定した経営を実現できる可能性が高くなります。
継承後の診療方針
前院長から患者を引き継いだ後、暫くの間は前院長の診療方針と比較されますが、患者との信頼関係を築く前に新しい診療方針に変えてしまうと、患者が離れてしまうこともあります。なかには前院長の診療方針が古いと感じることもあるかと思いますが、長年に渡る前院長と患者の信頼関係があるため、診療方針を変える際は慎重に検討されたほうが良いでしょう。
開業医として、診療理念を持つことは重要ですが、まずは前院長の診療理念や診療方針を踏襲し、患者との信頼関係を築きながら少しずつ自身の理念や診療方針に切り替えていくことで、患者離れを最小限にする事が出来ます。
医療に特化した仲介会社に依頼する
クリニックの事業継承は一般企業の事業継承と比較して、患者情報の引継ぎや関係行政への届出のタイミングなど、医療制度に関する専門的な知識が必要になります。このように、医療特有の事情を理解したうえで、細かい行政との調整や手続きが必要になるのが、クリニック事業継承です。医療法人の定款変更を伴う場合は、行政に定款変更を申請し、行政の認可を得ることが必要になります。認可されなければ、そもそもクリニックの事業継承自体が成立しないということも考えられます。
加えて同じようなケースのクリニックの事業継承でも都道府県など管轄する行政によって見解が異なるケースがありますし、同じ都道府県であっても定款変更を依頼する行政書士によっても認可されることもあれば否認される可能性もあります。ここに医療法の特殊性と専門性が必要になります。
株式会社の場合でも、業種によっては行政の認可が必要な業種がありますが、株式会社に対して許認可を出しているため、例えば会社から許認可事業を事業譲渡しようとした場合、対象事業を運営会社が変わることになりますので許認可の引継ぎが認められないということも起こり得ると思います。
これまで述べてきた理由により、クリニックの事業継承は、それを専門的に行う業者であっても、定款変更を否認されるリスクがゼロではありません。ですので、クリニックの事業継承を専門的に手掛ける業者以外に依頼することは、あまり正しい選択とは言えませんし、業者に頼むのであれば信頼が置ける業者を探すことが重要になってきます。