閉院(廃院)、それとも譲渡(継承)? ~クリニック引退時の判断ポイント~

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こんにちは。医院継承・クリニックM&A仲介支援のメディカルプラスです。当社では、クリニックに特化した事業継承支援を専門領域とし、新規開業を検討されている先生から、長年の診療を終え「そろそろ区切りを…」と感じておられる院長先生まで、幅広いご相談を日々お受けしています。その中で多くの先生に共通しているのが、「引退を迎えるとき、閉院(廃院)と譲渡(継承)のどちらを選ぶべきか」というお悩みです。地域の患者さん、従業員の雇用、ご自身のライフプランといった様々な観点が絡み合うからこそ、簡単に答えが出せないテーマだと感じています。

そこで本稿では、閉院と譲渡の違いを整理しながら、それぞれのメリット・デメリットをわかりやすく比較していきます。後継者不在の状況で判断材料を集めたい院長先生はもちろん、独立開業に関心をお持ちで、今後のキャリアや開業のあり方を考えたい先生方にも、お役立ていただければ幸いです。

閉院か譲渡か:引退を考えるときに浮上する選択肢

引退のタイミングは院長先生それぞれで異なります。体力面の変化・ご家族の状況・地域医療への責任、こうしたさまざまな要因が重なるなかで、「この先、クリニックをどのようにしていくか、迷っている」というご相談から、弊社にお寄せいただく事が多いのですが、このとき多くの先生が比較されているのが、閉院(廃院)として診療を終えるか、譲渡(継承)という形で次の世代につなぐか、という二つの選択肢 です。

どちらが適切かは一律に決められるものではなく、患者さんや従業員の行き先、先生ご自身とご家族の今後の生活設計など、複数の視点をあわせて検討していく必要があります。また閉院と譲渡は似ているようで、選択後の未来の姿は大きく異なります。地域医療への影響、必要となる手続きや費用、院長先生の負担の程度など、判断材料は幅広く慎重な整理が欠かせません。

まずは両者の特徴を把握し、先生にとって望ましい診療の終え方を考えていくことが重要です。次の章では、まずは一つ目の閉院(廃院)を選択した場合には、どのような点が特徴となるのかを整理していきます。

閉院(廃院)を選択する場合の特徴

閉院(廃院)は、院長先生がご自身の判断で診療を終えることができる選択肢です。以前は引退の際に閉院されるケースが多く見られましたが、閉院にはメリットとデメリットがあり、内容を正しく理解したうえで判断することが大切です。

閉院(廃院)のメリット

閉院の特徴は、自分の意思で区切りをつけやすいという点にあります。主なメリットは次の2点です。

1. 自分のタイミングで引退できる:
閉院(廃院)は、第三者との調整が不要で、院長先生の判断で引退時期を決められます。集患や労務管理が負担になったとき、体力面の変化を感じたときなど、「ここで一区切りにしたい」 と思ったタイミングで実行しやすい点が利点です。

2. 後継者不在のプレッシャーから解放される:
後継者問題は、開業医を悩ませる大きなテーマのひとつです。閉院を選択することで、「子どもに継がせるべきか」「家族に迷惑をかけないか」といった心理的負担から解放され、ご家族を後継者問題で煩わせずに済むという声をよく伺います。

閉院はご自身の意思を反映しやすい選択である一方、その後には費用や手続き、周囲への影響といった現実的な課題も生じます。こうした側面も含めて検討することが、納得のいく判断につながると考えております。

閉院(廃院)のデメリット

それでは次に、デメリットを考えてみましょう。閉院(廃院)のデメリットは、「負担の大きさのインパクト」が一言での特徴です。

1. 多額の閉院コストがかかる:
原状回復費用、医療機器・什器備品の処分、薬剤廃棄、退職金など、総額で1,000万円を超えるケースも珍しくありません。引退直前に試算して驚かれる先生も多くいらっしゃる印象です。

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2. 地域医療が空洞化するリスク:
長年通院されてきた患者さんにとって、突然の閉院は大きな影響があります。徒歩圏に他院がない地域では、診療体制が途切れ、先生が医師人生をかけて築き、地域の皆さまの日常を支えていた地域医療がここで終わってしまいます。

3. 従業員が職を失う:
従業員の雇用終了に向けた調整や説明が必要となり、閉院が近づくとモチベーションの低下や早期退職が起き、診療体制に影響することがあります。

4. 閉院前後の手続きが多岐にわたる:
保健所・厚生局・税務署・年金事務所など、多数の届け出が必要です。患者さんへの案内や未収金の整理など、診療以外の業務も増え、手間がかかります。

院長ご自身の負担で済むコスト面に加え、患者さんや従業員、地域医療への影響が生じる点を心配される先生が多い印象です。閉院は「自由度が高い」一方で、費用・手続き・人的影響という大きな負担も伴う選択肢であることを理解し、検討する必要があります。

クリニック譲渡(継承)を選択する場合の特徴

クリニック譲渡(継承)は、院長先生が築いてきた医療資産を次の世代へ引き継ぐ方法として、近年選ばれるケースが増えています。閉院とは異なり、診療を途切れさせず残すという選択肢であり、その特徴を理解しておくことが重要です。主なメリットは以下の2点です。

クリニック譲渡(継承)のメリット

クリニック譲渡(継承)の大きな特徴は、診療を地域に残したまま、院長先生ご自身は新たなステージへ進めるという点にあります。主なメリットは以下の2点です。

1. 譲渡対価が得られる:

クリニック譲渡(継承)で医院を次の経営者へ引き継ぐため、その譲渡対価を得られる点が最大の特徴で、引退後の生活設計を考えるうえで大きな安心材料にもなります。閉院では原状回復費用や医療機器の処分費用といった、負担として発生する項目も、譲渡の場合は設備・内装・医療機器をそのまま引き継いでもらえるため、結果として費用負担が軽減されるケースが多く見られます。

2.後継者不在の問題を解決できる:

「誰が今後この地域の患者さんを診るのか」「従業員の行き先はどうなるのか」といった、開業医の先生にとって大きな悩みである後継者不在の問題を、第三者継承により解決できる点も大きなメリットです。診療が継続されることで、患者さん・従業員・地域にかかる影響が最小限に抑えられ、院長先生ご自身にとっても精神的な負担が軽くなるケースがよく見られます。

譲渡(継承)は、クリニックを閉じるのではなく、地域医療・患者さん・従業員の未来を守りながら引退を迎える方法と言えます。一方で、検討や準備には専門的な知識も必要になるため、特性を理解したうえで判断することが大切です。次の章では、譲渡を検討する際に注意すべきデメリットについて整理していきます。

クリニック譲渡(継承)のデメリット

譲渡(継承)にはメリットがある一方で、検討にあたって理解しておきたい点もあります。閉院よりも準備工程が多く、段取りを整えながら進める必要がある点が特徴です。

1. 好きなタイミングで引退できない:

譲渡は、ご縁があってこそ成立する取引であり、まず買主様(後継者候補)とのマッチングが前提になります。このため、「そろそろ引退したい」と考えても、すぐに希望条件に合うお相手が見つかるとは限りません。また譲渡が成立したあとは、患者さん・従業員へのご案内や行政手続きなど、必要な引継ぎを順番に進めていく流れになります。後継者の先生と調整しながら進める点をふまえると、一定の期間をかけて進行するのが一般的です。

2.個人で進めるのが難しい:

クリニックの譲渡は、一般の M&A とは異なり、医療法をはじめとした専門的な制度への理解が欠かせません。 たとえば、医療法人か個人開業かによって必要な手続きが大きく変わったり、設備や資産の評価、税務上の取り扱いを整理したりと、検討すべき要素がいくつもあります。
情報収集から具体的な調整までを院長先生ご自身だけで進めようとすると、準備にかかる手間が想定よりも大きくなることがあり、結果として話が思うように進まないケースも見られます。譲渡を検討される際には、手続きの流れや必要な準備をあらかじめ整理し、無理のないスケジュールで進めていくことが大切です。

このように譲渡を選択する場合、クリニックを残しながら引退を迎えられる有力な選択肢である一方、進め方には一定の段取りや調整が必要になる点も押さえておく必要があります。どの程度の準備を要するのか、どこに注意すべきかを事前に把握しておくことで、院長先生ご自身の希望に沿った進め方がしやすくなります。

医院継承に関するメリット・デメリットについては、以下の資料もご参考ください。

売主様向け|医院継承のメリットとデメリット

買主様向け|医院継承のメリットとデメリット

医院の今後に迷われたときは

メディカルプラスでは、「地域医療の継続と発展に貢献する」という理念のもと、クリニックに特化した第三者医院継承の支援を行っています。これまで数多くのご相談に携わってきた経験から、閉院と譲渡のどちらが適切か迷われている院長先生にとって、どのような点が判断材料になるのかを丁寧に整理しながら進めることを大切にしています。

閉院か譲渡かの判断は、お一人で抱えるには負担が大きく、状況に応じて考えるべき視点も異なります。「今すぐに結論を出すべきか」「選択肢を広げておくべきか」など、まずはお考えを整理する段階からでも構いません。医院の今後について迷われたときには、ぜひお気軽にご相談ください。

当社では随時無料相談を実施しております。医院継承、クリニック売却買収、医療法人M&Aをお考えの方はこちらより【お問い合わせ】お気軽にお問い合わせください。

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