クリニック閉院(廃院)時に必要な手続きについて

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こんにちは。医院継承・クリニックM&A仲介支援のメディカルプラスです。日頃より、閉院(廃院)と譲渡(継承)のどちらを選ぶべきか悩まれている院長先生から、さまざまなご相談をいただきます。その中でも特に多いのが、「閉院を選択する場合、どのような手続きが必要なのか」というお問い合わせです。過去記事では、廃院に伴うおもな費用やその背景にある負担について、また閉院と譲渡それぞれの特徴や判断材料についてもご紹介いたしました。

 

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今回はその続編として、クリニックを閉院(廃院)する際に必要となる手続きの全体像をまとめました。行政手続き、スタッフ対応、物件解約、システム停止など、多岐にわたる実務が同時に発生するため、事前に全体像を把握しておくことは負担軽減につながります。また閉院をすぐに決断する段階ではない先生方も、「開業医であれば知っておくと安心できる情報」としてご活用いただければ幸いです。

閉院(廃院)には多くの実務が同時に発生する

クリニックの閉院(廃院)は、後継者不在やご体調など、やむを得ない事情から検討されるケースが一定数あります。厚生労働省「医療施設(静態・動態)調査」では、毎年多くの一般診療所・歯科診療所が廃止を届け出ており、全国的にも一定の割合で発生していることが報告されています。
※調査概要:https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/79-1.html

閉院(廃院)は、全国的にも一定数発生している手続きですが、実務レベルでは「思った以上に複雑だった」と感じられる先生がほとんどです。閉院(廃院)は、これまで築いてこられた診療体制や患者さんとの関係性を区切る選択肢でもあり、 診療を終了するだけではなく、行政手続き、スタッフ対応、社会保険や税務処理、物件解約や原状回復、電子カルテ・レセコンの停止、患者さんへの告知など、複数の領域が一度に動き始めます。それぞれは個別に見れば難しいものではありませんが、領域が分かれているうえ、期限が存在する手続きも多く手間がかかるため、院長先生お一人で抱えるには大きな負担となりがちです。まずは全体像を整理し、手続きを迎える前に流れを知っておくことで、閉院時の混乱や見落としを防ぐことができます。

なお閉院に伴う費用については、行政手続き、設備・物件の原状回復、スタッフ対応など複数の領域にわたります。費用の内訳や相場感については、過去記事にて整理していますので、併せてご参照ください。

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閉院(廃院)で必要となる主な手続きは何か

それでは、クリニックを閉院(廃院)する際の手続きと実務について、主なものをみていきましょう。

行政・医療法上の手続き

クリニックを閉院(廃院)する際には、複数の行政機関へ書類を提出する必要があります。これは、診療所運営というものが「医療法」「保険医療機関としての指定」「社会保険・労務」「税務」「生活保護法の指定」など、複数の制度にまたがっているためです。担当する制度ごとに所管が異なるため、閉院時の手続きも一か所で完結しない仕組みになっています。

ここでは、閉院(廃院)にあたって必要となる、行政と医療法上の主な届出を、提出先ごとに整理してご紹介いたします。

提出先主な届出
管轄の保健所診療所廃止届、エックス線廃止届(該当する場合)
地方厚生局保険医療機関廃止届
都道府県(麻薬)麻薬施用者業務廃止届
福祉事務所生活保護法指定医療機関廃止届
医師会退会届
医師国民健康保険組合資格喪失届

詳細は自治体ごとに様式・締切が異なるため、事前の確認をおすすめします。

*参考:厚生労働省「医療法関連通知」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/79-1.html

税務・社会保険・労務に関する手続き

閉院(廃院)は「事業の廃止」でもあるため、税務・社保・労務の届出も不可欠です。以下に必要となる主な税務・社会保険・労務の手続きを一覧で整理しましたので、ご参考ください。

提出先主な届出
税務署廃業等届出書、消費税事業廃止届出書、給与支払事務所等の廃止届出書、青色申告の取りやめ届出書
都道府県税事務所事業廃止届出書
年金事務所健康保険・厚生年金保険 資格喪失届、適用事業所全喪届
労働基準監督署労働保険概算・確定保険料申告書
ハローワーク雇用保険適用事業所廃止届、雇用保険被保険者資格喪失届

税務・社保・労務の領域は締切日がシビアで、ミスが生じると後処理が大変になるため、税理士・社労士への依頼も視野に入れるとスムーズです。

患者さん・関係機関への告知と、電子カルテなどの情報整理

閉院(廃院)は事務手続きだけでなく、人的・情報的な対応も重要です。


患者さんへの告知
患者さんの診療継続のために、2〜3か月前から準備を始めるケースが一般的です。

● 院内掲示による閉院案内(一定期間前に掲示)
● Webサイト・予約システムでの告知
● 定期通院中の患者さんへの個別案内
● 診療終了日・最終受付日の明示
● 処方箋・経過フォローの取扱い説明(例:近隣医療機関への案内が必要な場合)

関係機関への連絡
日常的に取引のある関係機関への連絡も必要です。

● 医薬品卸・検査会社・医療機器保守業者
● 介護事業所(訪問看護等)
● 近隣医療機関への共有(必要に応じて)
● 予約を抱えている患者さんへの最終案内(閉院後にトラブルが生じないよう、定期検査や継続治療が必要な患者さんへの配慮)

電子カルテ・レセコンの停止とデータ管理
停止作業だけでなく、以下が必要です。

● 電子カルテのデータエクスポート(業者による対応が必要な場合あり)
● 保存データの保管(医療法上の保存期間に従う)
● 予約システム・問診システムの停止
● レセプト請求の最終処理
● マイナンバーカード資格確認端末の停止・返却手続き

医療情報システムは停止手順が業者ごとに異なるため、早めの相談が有効です。見落としが生じやすい領域でもありますので、業者とスケジュールを共有しながら進めましょう。

院内の備品撤収・原状回復

閉院に伴い、院内の物理的な片付けも発生します。

● 医療廃棄物の処分(専門業者による回収が必要)
● 医療機器の撤収・廃棄(状態によっては買い取り可能なケースもあり)
● 薬剤・衛生材料の処分
● テナントの解約・原状回復費用の見積もり
● リース残債・借入金の精算

原状回復はスケルトン返しが求められるケースなど様々で、費用幅の見通しが立ちにくい項目です。医療機器処分の詳細は別記事で取り扱います。

廃院後も続く記録類の保管義務

閉院(廃院)後であっても、診療に関する記録には一定期間の保管義務が続きます。「廃院したから破棄してよい」と誤解されがちな部分ですが、院長先生ご自身が責任をもって管理する必要がある領域 です。これについては「心理的にも物理的にもしんどい」といったお声が聞かれることも少なくありません。主な保管期間は次のとおりです。

● カルテの保管義務(5年)(医師法第24条
● X線測定記録(5年)(医療法施行規則第30条の21,22)(保険医療機関及び保険医療養担当規則第9条
● レントゲンフィルム(3年)※撮影した疾患の診療行為終了後から(保険医療機関及び保険医療養担当規則第9条
● 向精神薬の廃棄記録(2年)(第1種向精神薬、第2種向精神薬の廃棄に限る)(病院・診療所における向精神薬取扱いの手引

これらは、電子カルテ等のデータ保存・バックアップの仕組みと合わせて、閉院準備の初期段階から計画することが負担軽減のポイントになります。

第三者への医院継承という選択肢について

ここまでご紹介してきたように、閉院(廃院)は多くの実務と調整を必要とし、コスト負担も決して小さくありません。こうした理由から、近年では第三者への医院継承を検討される院長先生も増えています。医院継承は、これまで先生が地域に築いてこられた診療体制や患者さんの基盤を残す、また譲渡することにより対価が得られる、そして後継者に想いを継いでもらえるといった点があります。もちろん継承にも固有の手続きや調整は伴いますが、近年では仲介会社や専門家の支援体制が整っていますので、プロの伴走のもと着実に進めることが可能です。

何が正解かということではなく、閉院(廃院)と医院継承の両方を理解したうえで、院長先生にとって最も納得のいく判断をする事が大切かと存じます。長年大切に運営されてきたクリニックの今後を考える際に、第三者への継承という選択肢も、ひとつの視点としてご検討いただければ幸いです。

医院継承に関する無料相談実施中

閉院(廃院)や医院継承について検討される際は、早い段階で情報を整理しておくことで、必要な手続きや選択肢が把握しやすくなります。まだ方針が固まっていない段階でも、状況を客観的に整理するところから始める院長先生が多くいらっしゃいます。私どもには「閉院か譲渡か、まだ決めきれない」「現時点で相談すべきか分からない」といったご質問もよくいただきますが、今後の方向性について考えるタイミングで、情報を整理しておくことが役立つ場合もあります。判断を急ぐのではなく、状況に応じて必要な情報を確認していただく場として、弊社をはじめ仲介会社をご利用いただければと思います。

当社では、医院継承やクリニックの売却・買収、医療法人M&Aに関する無料相談を随時承っております。「まずは情報を整理したい」「自院の場合にどのような選択肢があり得るのか知りたい」といった段階から、こちらから【お問い合わせ】お気軽にお問い合わせください。

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