クリニックの「事業譲渡」とは? ~その譲渡価格算出方法もご説明!~

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こんにちは。メディカルプラスです。今回の記事では「事業譲渡」についてお伝えいたします。譲渡価格の算出や、税金関連、クロージングまでの手続きについてもご説明して参りますので、M&Aを検討されている方はぜひご参考ください。
そもそも「事業譲渡」とは?
「事業譲渡」とは、クリニック単体を譲渡することを指します。事業譲渡は個人経営のクリニックだけでなく、医療法人が運営する複数のクリニックから特定のクリニックを譲渡したい場合や、医療法人は親族が継承し、クリニックのみ事業譲渡したい場合、医療法人の資産負債の整理が困難な場合など、事業譲渡によりクリニックを譲渡することが可能です。
医療法人譲渡の場合、現理事長から新理事長へ変更する手続きは必要になりますが、あくまで代表者を変更することが一般的で、医療法人が結んでいる契約関係はそのまま継続となる包括継承となります。これに対して事業譲渡の場合は、売手と買手で経営に必要な資産の取捨選択を行うことが出来ます。具体的に申し上げますと、クリニック自体に紐づいている事業運営に必要な資産のみが引き継がれ、借入金などの負債は引き継がれません。職員への退職金支払い債務や簿外債務も引き継がれることはありません。また、個人クリニックの場合は院長個人、医療法人の場合は医療法人にそれぞれ事業が帰属しているため、事業譲渡をする際、売主側ではクリニックの廃院届の提出や保健所への許認可の取り下げを行う必要があり、買主側では開設届を提出と必要に応じて許認可の再申請を行う必要があります。スタッフとの雇用契約やリース契約なども個人クリニックの場合は院長個人、医療法人の場合は医療法人それぞれとの契約であるため、買手は再度締結が必要になります。
医療法人の出資持分譲渡についてはこちらをご参照ください。
譲渡価格の算出方法とは
事業譲渡の際の譲渡価格は一般的に、内装や医療機器、備品等の譲渡資産時価額に営業権(のれん代)を加えた金額となります。

譲渡資産時価額は、減価償却明細表をもとに各資産を直近月まで減価償却計算し、時価額に直すことで算出されます。営業権(のれん代)の算出方法は決まった方法があるわけではなく、仲介会社により算出方法は異なります。メディカルプラスでは実質利益の1年分を営業権(のれん代)として提案しております。実質利益とは、営業利益に削減可能経費や減価償却費を差戻した金額です。削減可能経費には、院長がプライベートで使用している車の維持費用や、親族への支払給与、接待交際費などがあげられます。
のれん代について詳細はこちらをご参照ください。
クロージングまでの流れ
次に、最終契約締結後、実際に経営権が移譲するクロージングまでの期間に行う主な内容を売主・買主双方の目線からご説明いたします。
《 クロージングまでの流れ:売主の場合 》
| 買主と相談をして進める内容 |
| ●テナントオーナーへの顔つなぎ ●リース契約先担当者への顔つなぎ ●インフラ関係の引継ぎ ●職員への公示と顔つなぎ(雇用契約・退職金規程に従いクロージングまでに清算) ●患者さんへの公示と引継ぎ |
| 行政手続き的な内容 |
| ●閉院手続きの準備(クリニック廃止届の準備や、医師会脱退手続き) ●レントゲン廃止届の準備 ●保健所管轄や役所管轄に届出をしているものの取り下げ準備 ●税務署や労基署への閉院届出準備 |
《 クロージングまでの流れ:買主の場合 》
| 売主と相談をして進める内容 |
| ●テナントオーナーへの挨拶と賃貸借契約の締結 ●リース業者への挨拶とリース契約締結 ●インフラ関係の引継ぎ ●職員への挨拶と雇用契約書の締結 ●患者さんへの挨拶と診療内容引継ぎ |
| 行政手続き的な内容 |
| ●開院手続きの準備 ●レントゲン設置届の準備 ●保健所管轄や役所管轄への届出準備 ●税務署や労基署への開院届出準備 |
| 必要に応じて行う内容 |
| ●医師会への事前相談と入会申請 ●防火管理者講習の受講 ●金融機関への融資相談と融資契約の締結 |
行政手続きについての詳細はこちらをご参照ください。
事業譲渡対価に係る税金について
事業譲渡の際、個別の資産取得と同じように消費税が発生します。
具体的には、実際に受領した譲渡対価と、有形資産の時価額を除いた譲渡資産の時価額の差額が利益(譲渡益)となり、個人クリニックの事業譲渡をした売主の場合ですと、譲渡益は給与所得や事業所得と合算して税金を計算する「総合課税」となります。税率は課税される所得金額により5%~45%の所得税率と、10%の住民税が課税されます。医療法人からの事業譲渡をした売主側の場合は譲渡益に対して法人税が発生します。
事業譲渡の注意点
それでは事業譲渡についての注意点を3点あげさせていただきます。
《 1つ目:営業権(のれん代)の設定 》
譲渡価格は譲渡資産時価額に営業権(のれん代)を加えた金額であることは先ほどご説明いたしましたが、最終的な譲渡価格は、仲介業者による譲渡価格の査定結果をもとに売主自身が決めていくことになります。その際、売主ご自身の理想を重視し、営業権(のれん代)を実質利益額から乖離した金額で設定されますと、買手候補者が見つかりにくくなってしまう可能性がありますので、譲渡価格をお決めになる際は、顧問税理士や会計士、コンサルタントに相談された上で、市場取引価格を参考に金額設定することをおすすめいたします。
《 2つ目:許認可や契約の再締結 》
クロージングまでの流れをご確認いただくと分かるように、基本的にクリニックの許認可や契約は経営者もしくは経営母体に紐づいているため、再度許認可申請や契約の再締結が必要となります。忘れてしまうと、開業できない!なんてことも起こり得ますので、ご注意ください。タイトな譲渡スケジュールの場合は特に注意が必要です。ご不安な場合は必要に応じて行政書士に依頼することをご検討されるのも良いでしょう。
《 3つ目:譲渡対象外資産の整理 》
事業譲渡の場合は包括継承でない旨をご説明いたしました。そのため、買主は引き継ぐ資産や負債を任意で選択することができます。例えば不要と判断した医療機器等のリース債務は引き継がない選択をすることが可能です。この場合、引き継がれないリース債務は売主側で清算していただくことになります。
事業継承という選択肢
ここまで事業譲渡についてご説明して参りました。まとめると以下の通りです。
■譲渡価格の算出方法は譲渡資産時価額に営業権(のれん代)を加えた金額
■買主は譲渡対象資産を任意選択することが可能
■負債引継ぎが無いため買主は簿外債務リスクが無い
■雇用主が変わるためスタッフの雇用契約引継ぎは無く、必要に応じて売主は退職金を支給し、買主は新たに雇用契約を締結する
■不動産賃貸借契約やリース契約等の引継は原則行われないため、売主顔つなぎのもと、買主が相手方当事者と新たに契約を締結する
■保健所・厚生局の申請手続きは、売主は廃止、買主は新規の手続きをとる
■複数施設を運営する医療法人からクリニックごとに切離して譲渡することが可能
■事業譲渡対価と譲渡資産時価の差額は利益(譲渡益)となり、他の所得と合算して総合課税
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