安楽整形外科 前院長 安楽岩嗣 先生
- 譲渡事例

ご経歴
1977年に昭和大学医学部をご卒業後、1993年5月神奈川県横浜市戸塚区に「安楽整形外科」を開院し、30年以上にわたり地域の皆さんに寄り添う診療を続けてこられてきた安楽岩嗣先生。長年のあたたかな地域貢献を重ね、2025年2月院長をご勇退、医療法人に第三者医院継承をされました。現在は同クリニック(名称変更:東戸塚整形外科・リウマチ科)にて、非常勤医師として診療をつづけ、変わらぬ思いで患者さんに向き合っておられます。
安楽整形外科 前院長 安楽岩嗣 先生 医院継承インタビュー
32年間経営されてきたクリニック。譲渡後の今のお気持ちをお聞かせください。

今は実際、ほっとしていることが1番です。いろいろな雑務もやっと終了して生活もある程度できてきましたし、ゆっくりほっとしているのが1番というところです。
医院譲渡後の私生活の変化や心のゆとりなど、継承したからできたと感じる場面はありますか?

今実際退屈な生活はあまりしていなくて。じっとしているのがあまり好きではないので、1日1つは運動や趣味の予定を入れるようにしています。あとは今まで行けなかった旅行の計画をたてて、実際に旅行に行くのは、1人で行ったり家族で行ったりで楽しめるようになりました。
上半期予定しているのは、ニューヨークとクルーズですかね。クルーズが好きなのでそちらを予定しています。クルーズは飛鳥Ⅲが就航するので、処女航海は残念ながらちょっと取れなかったのですが、セカンドで行こうと考えています。
医院を譲る選択肢を知ったきっかけを、ぜひお聞かせください。

最初はですね、閉院=廃院と考えていて。継承という選択肢はあまり頭の中にはなかったのですが、色々な情報とか…あとはDMを見て。こういう継承という選択肢もあるんだというのを知って、ちょっと考えてみるようになりました。
結構DMも多かったですね。なぜか知りませんが、結構色々なところから来るようになりましたね。DM以外の「色々な情報」というところでは…、廃院を考えてはいたんですけど、素人考えでそんなに費用もかからないと思っていて。その方が簡単かな、と思っていたんです。よくよく聞いて会計士さんとも相談すると、「先生が考えているようなそんな費用じゃ済まない」と。あとカルテとか医療機器の処分とかもあるし、これはちょっと甘いんじゃないのという忠告は受けました。で、これはちょっとまずいかなと。うまく継承も考えないといけないなと思いましたね。
実際に譲ろうと思い、行動された時期についてお聞かせください。

2020年くらいから色々医院の規制とか医療従事者への行動制限もあったので、厄介だなと思い出したのがその頃で、ちょうどテナントの契約も終わりに近づいてきたので、それも考えて大体2年前くらいからですかね、2022年くらいから真剣に閉院を考え出したことになります。
2022年頃から準備を始めていたことでいうと、実際準備という準備はしていないのですが、医療面は私ですけども経営面は主に事務長として妻がやっていたので、妻と相談して同意してくれたので特に準備することはなかったんです。どうやって継承するかとか廃院の手続きをどうしようかというのはちょっとずつ考えたかもしれないけど特別準備はまだしてなかったね。本格的に動き出そうよと言っていたのが1年、2人で相談して1年あれば大丈夫じゃないのと話して1年後ですかね。
1年で継承されたいというお話でした。継承までの期間について当時どのようにお考えでしたか?

その時は1年あれば十分だろうと思っていましたが、最初お会いしてお話ししてその時に言われたんです。「先生1年じゃちょっと…時間的に余裕はあんまりないかも」と。実際そうなの?という感じがあったんですよね。もっとその前から継承というか辞める意思はあったので、まあその時思ったのは何で1年後って決めて待っていたのかなというのは反省としてありましたかね。もっと早く動いていれば良かったなと。
他の話はあまり聞いていないんだけれども、「2.3年はかかりますよ、余裕を持っていた方がいいですよ」というのはありましたね。
どんな方にお引き継ぎしていただきたいという条件や理想像は? また実際にお会いした日を振り返って印象に残っていることは?

今回医療法人に継承しましたが、「医療法人に継承する」という考え自体最初はなかったので、そういうのもあるのかとやってみてわかりました。
実際にお会いた候補者の先生は1名のみです。医療法人の理事長には会っていなくて、主に事務長さんとお会いしたんですけれども、最初の印象は事務長さんというと難しい人なのかなという感じがありました。それがお会いした感じが柔らかい印象で、まだお若いし人当たりが良くて好印象な方で話しやすく、安心しました。
(医療法人に継承するという)意思決定をする上での判断材料ですが、過去にも数件のクリニックを同じような形で継承された医療法人なので、クリニックの経営ノウハウを事務長が熟知おり方針の説明があったのがひとつです。従業員の引き続き就労も確約してくださるし、こちらからお願いする前にそういう話が十分にあって、継承に関してよくわかっていることがこちらも理解できましたので、ここであれば大丈夫と判断できました。
譲渡金額についてお伺いします。金額に納得できた、もしくはもっとこうしたかった等ありますか?

自分たちも、開業する際に金銭的負担はかなりきつかったのです。そのため、継承する先生への負担を考えて金銭的な面で断られると残念と想い「査定額よりも少し安い金額で良いですよ」と伝えました。うちの継承の考えとしては、費用が持ち出しにならなければ良いと考え、この金額に対してはこれでいいかなと思っています。
お引き渡しが2025年2月と、最終契約から約8カ月期間が空きました。その間で印象に残っている出来事は?

2025年1月くらいまで特に動くことはなく、1.2月になると継承先の先生の機材が入ったり、院内の内装の変更や電子カルテの導入があり「先生、それに少し慣れてください」ということで、インストラクターのような先生がついてやり始めて、そのような環境が今までと違い大変でした。
またリハビリの患者さんも入ってくるので、今までは点数的に消炎鎮痛だったのが運動器リハもとり、この辺に関して診断診療し直したり、レントゲンの設営をしたりするとレントゲン技師さんもいないのでその辺に時間がかかりました。患者さんの待ち時間が増えました。その辺がちょっとその頃の反省点ですかね。流れを変えなければならない所が出てくるので。その辺が特別トラブルはないんですが、自分で動いていればそれで済みますから。でもちょっと負担は大きくなりますね。
いつ頃にスタッフ、また患者さんへの告知をしましたか?

スタッフへの告知は、最終契約が決まった時点です。年明けになると継承する医療法人の人たちが入ってくるので、入ってくる前に伝えました。スタッフの反応としては、希望するスタッフについては就労が確約されているのは元々話してあり、話すのと同時期に継承先がスタッフと話す時間を設けてくれたり、他のクリニックに「こうしていきます」と直接クリニックに見学させてくれたりもしたので、そこは良かったです。スタッフからの質問も答えづらいことはありませんでした。
患者さんへの告知は、最終契約後、院内に2月末でクロージングになりますという告知と同時に3月からまだ新しい院長が着任できないと。4月1日からとのことだったので、1か月間は私が診療を続ける期間になりました。その期間で1人ずつよく来院している方には直接説明もするし、掲示を見て質問してくる患者さんには私も引き続き診療は担当するをと説明しました。混乱はなかったように思います。
事実を知って通院をやめると話す人はいませんでした。ただシステムが変わったら、毎日通院されていた方でちょっと遠のいたかな…という方は、いらっしゃいましたね。
引継ぎ中大変であったり、もう少し事前に継承先と話しておけば良かったと思うことはありますか?

電子カルテの件は、(自分の)負担が大きかったように思います。ただ医療法人もインストラクターをつけてくれていましたし、リハビリのスタッフも患者さんに「内容は変わるけれど」と説明をしながらやってくれていたようなので、それは良かったですね。
継承後も非常勤で診療を続けられていますが、立場が変わったことで日々の診療で感じることや気づきがあればお聞かせいただけますか?

それはもうガラッと変わって(笑)とっても楽ですよ。もう患者さんへの対応(診療)をするだけで済みますので。あとは今までの(院長の)癖から色々見て気にかかることはありますが、それはもう何もこちらから言うことでもなく、「いやいやこれはもう、お任せすればそれでいいんだ」で。患者さんだけの対応になりますので、すごく楽ですね。
医療法人さんに継承したおかげで、個人の開業医の先生ではあり得なかったかもとも思いますが、現在は非常勤の勤務医として、引き続き週1回ですけれども、診療を担当させてもらっています。仕事をそのまま続けられること、またある程度社会との繋がりができていますので、それは凄く、医療法人さんに継承していただいて良かったかな、と思います。
今回の譲渡で得られた対価について、先生ご自身でどのように活用されたのか、もし差し支えなければ教えていただけますか?

この費用はですね、最初申し上げた通り持ち出しにならなければいいなと。残った費用は、クリニック譲渡に対しあまりそういった期待をしていませんでしたから、これはもう使おう!と決めていて。使うということで、さっきもお話したとおり旅行とかの費用に回しました。
医療法人への継承という決断を振り返り、安楽先生が考えるメリットとデメリットをお聞かせください。

1番のメリットは、自分が医療面だけをやっていて、経営は妻が事務長としてやっていたので、それから解放されるということが「家族としての1番のメリット」だったと思います。デメリットは…感じていない、今は感じていないですね。
最初は廃院しか考えていなかったところが、医院継承という方法があって、そちらを選んでやったわけですけれども。素人考えで廃院の方が簡単でいいかなと思いましたが、いやいやそうじゃないと。継承を選んで運よく早く、思ったより早く相手を探していただいて、またその相手が継承に慣れた相手(医療法人)だったので、こちらにそう負担なく継承できたというのが1番有難かったことかなと思います。今も仕事を続けていられるというのも、良かったかなと思います。
最後に、これから譲渡を検討されている先生方に向けて一言メッセージをお願いいたします。

繰り返しになりますが、時間的に余裕がないと。うちは運良くだと思います。うちは運良く継承できましたけれど、やはり時間的な余裕はあった方が良かったと思いますし。仕事を辞めるという考えが起きた時点で、廃院もそうですし継承もそうですし、その時点である程度動き出しが必要だということ。
その頃に医師会にも相談しました。医師会にも継承の窓口はありますが、結局自分でやらないといけない、自分で色々動いてやらないといけないというのがあります。診察しながら自分で動くのは難しい。ほとんど不可能だと思います。
やっぱり廃院するにしてもそうですけれど、その手続きがわかりませんし、継承になったらもっと複雑で素人ではちょっと無理かなと。「やっぱり専門的な経営経験があって知識があるパートナーとやらないと、これはちょっと難しいのではないか」というのがやってみて初めてわかったことで。
その点から言うと、初めてお会いした時からすごく説明も流暢で、とても素人にわかりやすい説明もあったので、非常にその点は助かりました。まあメディカルプラス…神子さんだったから良かった、というのは正直ありますね。
安楽先生、貴重なお話を有難うございました。
この事例を担当したのは、弊社アドバイザー 神子 誠です
学生時代にお客様からの感謝の言葉に触れた経験からサービス業に惹かれ、自動車メーカーで9年間のサービス業務に従事。その後メディカルプラスの理念「地域医療の継続と発展に貢献する」に共感し、2018年に入社。以来、50件以上のクリニック継承支援に携わり、お客様一人ひとりのニーズに応じたきめ細やかなサポートを提供。名前の通り誠実な対応と豊富な経験が、多くのクライアントから高い評価を受けている。

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