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院長の相続対策を解説!事業継承における注意点とは?

  • 医療継承コラム

医院継承(承継)、クリニック売買、医療法人M&Aのメディカルプラスです。
今回の記事では、リタイアを考えている開業医の院長先生向けに、相続および第三者への事業継承に焦点を当てご説明いたします。

「相続」という言葉を耳にすると「相続税」についてご心配される開業医の先生方は多いと思われます。その理由は一般的なサラリーマンと比較して、開業医の相続財産は高額になるケースが多いからです。この記事をご覧になっていらっしゃる方の中には生前贈与で相続税対策を実行されている方もいらっしゃることかと存じます。
一方で、開業医の院長先生にとって相続税以外にも様々な事項を検討する必要があります。本記事では相続あるいは第三者継承を実行するなかで、クリニック独自の課題をご紹介しますので、ぜひご一読いただきご参考にしていただければ幸いです。

相続とは

相続とは、「亡くなった人の財産などの権利・義務を、残された家族などが引き継ぐこと」をいいます。亡くなった人を「被相続人」財産などを引き継ぐ人を「相続人」といいます。人が死亡した場合に、誰が相続人となり、何が遺産に当たり、亡くなった人の権利義務がどのように承継されるかなど、相続の基本的なルールは民法において定められていて、この部分は相続法とも呼ばれています。一般的に相続の対象となる財産(遺産)は次のものが挙げられます。


《一般的に相続の対象となる財産》
現金や預貯金
株式等の有価証券
車・貴金属等の動産
土地・建物等の不動産
借入金等の債務
賃借権・特許権・著作権等の権利


開業されている先生が「個人事業」としてクリニックを運営されている場合、前述した財産に加え、医療設備機器が個人の所有ならば相続の対象となります。後継者に医師がいない、または医療機器が古くて相続しても使用できないなどの際は廃棄をしなければならず、廃棄費用が掛かってしまうことを想定しておくことが重要です。

一方、医療法人の場合、医院の土地、建物、医療設備などが医療法人の所有となっていれば個人の相続財産にはなりません。相続財産として注意が必要なのは「出資持分」です。出資持分とは「平成19年3月31日以前に設立申請された出資持分のある医療法人(経過措置型医療法人・いわゆる旧法人)に対する財産権」のことを指します。この出資持分(一部または全部)は第三者に対し、譲渡することができます。そして譲渡時の出資持分の評価額は、「医療法人設立時の出資金額」に、「経過年度の利益剰余金」を合算したものになります。例えば、1,000万円を出資した法人が、順調に経営されて法人純資産が1億5,000万円まで増加した場合、出資持分の評価額は1億5,000万円となります。

医療法人は剰余金の配当が禁止されていることから、長期間経営すれば純資産が大きくなりやすい傾向にあります。出資持分を相続する場合、財産権があることから相続税の課税対象となります。仮に相続が発生した場合は純資産が大きいほど莫大な相続税が発生するのですが、出資持分は換金性の高い一般株式とは異なり換金性が低いため、相続者が納税資金を捻出できない可能性もあるのです。
※出資持分については下記記事に詳細を記載されておりますので、ぜひご覧ください。

医療法人M&A: 出資持分譲渡と退職慰労金の手取りと課税について

出資持分の評価高騰と相続税のリスク

前述したとおり出資持分の評価額は高騰し、過大な相続税が課される恐れがあります。もっともよいのは、相続発生前に出資持分なし医療法人に移行をしておくことです。出資持分なし医療の法人であれば、そもそも持分という概念が存在しないため、出資持分に対する相続税課税もなくなります。
なお、出資持分あり医療法人から出資持分なし医療法人への移行の際は、移行計画について国の認定を受けておくことで、本来であれば移行時に発生する贈与税が課税されない「認定医療法人制度」が設けられており、令和8年12月31日までの認定制度で税制優遇措置や低利の融資などを受けられます。

*参考:厚生労働省「持分なし医療法人への移行促進策(延長・拡充)のご案内 」
医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置

出資持分なし医療法人である場合は、医療法人にかかわる相続税の心配はほぼ不要です。
出資持分なし医療法人にも、複数の類型がありますが、そのうち「基金拠出型医療法人」の場合(ほとんどはこの類型です)、拠出した基金部分については、相続税の課税対象となります。
つまり、医療法人設立時に現経営者が出資した1,000万円の基金は、年月を経て医療法人の資産がどれだけ増えていようとも、相続や贈与においては1,000万円として評価されて課税されるということです。このことから、スムーズな医業の事業承継が可能になることが、現経営者・後継者にとって基金拠出型医療法人のメリットとなります。
いかがでしょうか。ひとくちに「相続」といっても様々な課題があることをお分かりいただけたのではないでしょうか。親族に後継者となる医師がいらっしゃる場合は自身(医療法人)の財産についてどのように相続をするのかを事前に検討、協議することで突然の事態に対して遺族の方々は安心して対応することが出来るのです。
次項では第三者への事業継承についてご紹介いたします。

第三者への事業継承とは

一方、身内にクリニックの後継人がいない、または自身とご子息(ご息女)の診療科目が異なっている場合、第三者継承(M&A)または廃業を検討することになります。クリニックにおける第三者継承とは、クリニックの営業権や事業を現経営者の親族や従業員以外の「第三者」に引き継ぐことを指します。
廃業手続きや地域診療への影響、スタッフの雇用を鑑みた場合、生前に後継となる第三者に院長(医療法人の場合は理事長)を交代しておくことが望ましいと言われていますが、自身の事業を第三者へ継承するとなると何から始めればよいか不明瞭な事項が多いかと存じます。まずは、下記事項をご検討、整理していただくことをおすすめしております。


《継承にあたり検討・整理しておきたい事項》
➀.家族への相談及び医院継承に関する家族間の合意

➁.親族へ継承意思の確認(親族に医師がいる場合)
➂.譲渡希望時期はいつ頃か?
➃.後継者に求める資質や人柄、その他希望する条件はどのようなものがあるか?
➄.不動産は売却か?賃貸か?の方針(不動産所有の場合)
➅.役員借入金及び役員貸付金の清算(医療法人の場合)
➆.未払い金、未収金の清算
➇.遊休資産の整理(保養所等の不動産やゴルフ会員権など)
➈.出資持分保有者及び保有割合の確認(出資持分あり医療法人の場合)
➉.クリニックの強みと弱みの把握と整理(今後の増収要因及び減収要因)

*参考記事:医院譲渡ガイド |クリニックM&A |医院継承 株式会社メディカルプラス


上記事項の中、重要なのが所有している不動産の取り扱いです。土地、建物ごと第三者へ譲渡するのか、あるいは土地、建物は譲渡対象とせず賃貸として管理するのかといった方針を検討する必要があります。
次項では土地、建物を所有している個人クリニックのケースを想定し土地、建物、資産への方針を検討する際の参考例をご紹介します。

個人事業クリニック(土地、建物所有)における不動産の取り扱い

1つ目の方法として、土地、建物を譲渡資産とせず、後継者(買主)と売主間にてクリニックの賃貸借契約を交わすというやり方があります。賃貸借契約ですので、クリニックの不動産は院長先生の手元に残り、継続して賃貸収入が得られます。なお、賃貸物件は相続対象ですので、相続人の賃貸料収入とすることができます。クリニックの建物が自宅と兼用の場合であっても、クリニック部分だけ賃貸すれば良いですので、自宅への影響もほとんどないのもメリットでしょう。しかし、賃貸料の不払い後継者が何らかの事情によりクリニックを閉院してしまったことにより家賃収入が入らないといったケースも考えられるため、デメリットがまったくのゼロという訳ではありません。

2つ目の方法として、クリニック財産をすべて後継院長に売却することが考えられます。この場合には、クリニックの売却所得で、その後の生活資金をまかなえるかを十分に検討する必要があります。後継者との相談次第ではありますが、後継者の下で勤務医として働くということも可能です。ですが、院長の時に比べて給与が落ちることは間違いありませんので、十分に検討しておく必要があるでしょう。また、クリニックの建物が自宅と兼用の場合には、転居も含めて検討する必要があります。

最後の方法は、院長先生の生前は後継院長との間でクリニックの賃貸借契約を締結し、死亡したのちに売却するというものです。これは相続税対策として有効な手法で、賃貸物件は相続時に評価減が適用されますので、節税につながるのです。また、死亡後に不動産を売却すると、土地・建物の売却益に対する所得税を軽減することもできます。考えておくべきリスクとしては、死亡後において確実に不動産を売却できるかどうかという点でしょう。生前に死亡を条件とした売買契約を締結することはほとんどないため、注意が必要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。相続、第三者継承のどちらを検討する上でも事前にご検討いただく事項が数多くあることがお分かりいただけたかと思います。前述した事項以外にも従業員様の雇用や患者様の引継ぎ、カルテの保管など整理検討する事項はクリニック、先生の御考えによって様々です。ご自身のクリニックをどうすればよいか迷われている方々は是非弊社の専門アドバイザーにご相談下さい。

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