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耳鼻咽喉科クリニックの開業 ~スタートアップ成功の鍵とは~

  • 医療継承コラム

こんにちは。医院継承(承継)、クリニック売買、医療法人M&Aのメディカルプラスです。
今回の記事では「耳鼻咽喉科クリニックの開業」をテーマにお伝えいたします。ご自身のクリニックを開業したい思いがある一方で、「どうすればより良いスタートを切れるのか分からない」といった漠然とした不安から、思い悩んでいる耳鼻咽喉科医の方も多いのではないでしょうか。本記事では、耳鼻咽喉科クリニック開業時のメリットや負担、成功の秘訣、新規開業と継承開業の違いについて詳しくご説明します。クリニックM&Aを検討されている方にお役に立てましたら幸いです。

耳鼻咽喉科クリニックを開業するということ

耳鼻咽喉科は子供の中耳炎から頭頸部腫瘍まで、多様な疾患を扱います。そのため、他の診療科目と比較して患者の年齢層が広いことが特徴です。また、聴覚・平衡覚・嗅覚・味覚など複数の感覚器を扱うことも特徴です。では、勤務医と開業医、それぞれのメリット・デメリットはどのようなものでしょうか。

開業のメリット

まず、メリットについて見ていきましょう。
クリニックを開業することの最大のメリットは収入の増加といえます。
開業医の場合、令和5年に実施された中央社会保険医療協議会「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査)報告」
によると、耳鼻咽喉科をメイン科目として運営しているクリニックの平均年収は31,159千円で、全診療科目平均年収31,411千円よりやや低めとなっています(但し個人クリニックのみ、医療法人は含まず)。これは、外来診療収益やその他の医業収益から、給与や医薬品費、設備賃借料などの経費を引いた損益差額となります。推移を見てみると、令和元年実施調査(コロナ前)での平均収入は約2,464千円、令和3年実施調査(コロナ禍)での平均年収は▲5,173千円となっており、コロナ禍で大きく影響を受けたことが分かる結果となっています。
一方で、勤務医の場合、別データ(労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査」図表5-17:経営形態別にみた主たる勤務先の年収)から見てみると、眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科医個人の平均収入は1078.7万円となっています。年収割合別に見ると、以下の通りです。

以上から、開業医は直近コロナの影響で平均年収に変動があったとはいえ、勤務医と比較すると平均年収は高く、勤務医では安定はしていますが収入アップに限界があるといえます。実際に弊社にご相談いただいた耳鼻咽喉科クリニックを例に挙げると、個人クリニックの平均で2,700万円前後の実質利益が出ており、医療法人の場合は年間3,000万円の役員報酬を受け取っているクリニックもあります。したがって、より高い収入を望む場合は、自身の頑張りによって収入アップにつながりやすい開業がおすすめと言えます。

また他にも、労働時間および診療に対する自由度が高くなることもメリットとして挙げることができます。勤務医の場合は基本的に所属している医療機関の方針のもと、勤務時間や医療方針が決められており、医療機器設備についても所属している医療機関の考えのもと選定されていることがほとんどです。

一方で開業医の場合、自身の想いと判断で医療機器設備を選定することが出来るのはもちろん、医療方針も自身の判断で決めることが出来るため、より一層患者一人一人に向き合って診療に当たることが出来ます。また、耳鼻咽喉科の場合は手術を自身のクリニックでするのか否かによっても勤務時間や医療機器設備の選定も大きく異なってくるでしょう。
他にも、病院で勤務する勤務医はほとんどの場合、当番制で当直やオンコール対応を求められるため勤務時間が不規則であることに対し、クリニックの場合はこれらの対応が求められることは非常に少ないため、QOL向上につながるといえます。

開業の負担

次に、耳鼻咽喉科クリニックを開業することで生じる負担はどのようなものがあるのか見てみましょう。まず挙げられるのは、多額の資金が必要になるということです。どのような項目にどれほど費用が発生するのか、具体的に見てみましょう。

◆耳鼻咽喉科クリニック新規開業の際の想定必要資金

医療機器・設備 2,500万円(+1,000~2,000万円)
不動産 2,000万円~5,000万円
その他 500万円
合計 5,000万円~8,000万円(+1,000~2,000万円)

医療機器・設備ですが、耳鼻咽喉科用ユニットや電子カルテ、レジスター、顕微鏡、エコー、オージオメーター、眼振検査装置、ネブライザー、オートクレーブがあれば開業は可能です。これに内視鏡の購入を考える場合はプラスで費用が掛かるとお考え下さい。
なお、医療機器についてはリースという手段もあります。様々なクリニックをお見受けいたしますと、高額な内視鏡システムやX線CT画像装置のみをリースするクリニックもあれば、ユニットから全て基本的にリースで用意するといったクリニックもあります。そのため、リースのメリットとデメリットをもとに、購入とリースのどちらがご自身の開業スタイルに合っているかをご検討の上、選択されることをおすすめいたします。

◆リースのメリット・デメリット

メリット デメリット
初期費用を抑えられる
事務管理の手間を省ける
新機種への乗り換えが簡単
資金調達よりも手続きが進みやすい
契約の種類によっては途中解約が困難
借り入れよりも高額
仕様変更できない場合が多い

不動産については、テナントで開業するか、不動産を購入の上で開業するかによって大きく異なります。テナントで開業する場合の資金使途は【テナント賃貸の初期費用+内装造作】不動産購入の場合の資金使途は【土地購入費用+建物建築費用+内装造作費用】が一般的です。ただし、都心部と地方部や、駅・繁華街からの距離によって金額は大きく異なりますのでご注意ください。
また、手術をするか否かによっても坪数や内装造作費用が異なります。手術をせずいわゆる一般診療のみとすると、診察室や待合室、処置室を考慮すると30坪前後が最低限必要でしょう。対して手術をする場合は、一般診療の造作に加えて手術室や回復室の造作も必要ですので、少し広めに考えて45坪前後と考えていただくと良いでしょう。テナント開業と不動産購入でお悩みの方は下記コラムもご参考ください。

クリニック開業物件はテナント?不動産購入? 各メリット・デメリットを解説!

またその他に、責任の所在が院長自身になることも挙げられます。開業すると医院の責任者は自身になるため、医院で起きるさまざまなトラブルに対して全て自分の責任として対応しなくてはなりません。
例として挙げるならば、集患対策や周辺競合クリニックの調査・医療情報の収集はもちろん、スタッフの採用・勤怠管理から育成までの人事労務、患者さんからのクレーム対応、行政などへの各種届出関係の管理、レセプト請求、院内設備の管理維持など非常に多岐に渡ります。
特に開業当初は院長もスタッフも慣れない環境下でのスタートとなりますため、人事労務面は非常にご苦労される院長先生が多いようにお見受けしております。

耳鼻咽喉科クリニック開業の成功の秘訣

続いて、耳鼻咽喉科クリニックを成功させるための施策例をお話します。

周辺競合クリニックとの差別化を図る

周辺競合クリニックよりも診療時間を長めに設定したり、休診曜日をずらしたりすることにより、まず患者受け入れ態勢の差別化ができます。なお、テナントによっては土日の診療を入居条件としている場合もありますので、事前に確認されることをおすすめいたします。診療内容の差別化においては、検査や自費診療の積極的な導入により実現可能と考えられます。これらに加えて、首都圏であれば駅近の路面店で駐輪場を付けること、郊外であれば駐車場はマストとすることで、通院環境が整い、より多くの患者さんの来院が見込めると考えられます。

経費削減を徹底する

こちらは少々見落とされがちですが、経費を削減することはつまり利益が増えることに直結しますので、経費の削減は非常に重要な項目です。例えば、広告宣伝費や交際費の見直しだけでなく、検査委託料も複数業者の合い見積もりを取って判断することをおすすめいたします。

繰り返し通院したくなるクリニック作り

医療もサービス業の時代ですので、患者さんの満足度が高く、選んでもらえる・リピートしてもらえるクリニックになる必要があります。そのための仕組みづくりの一環として一人ひとりの回転数を上げつつ満足してもらう。これら実現のために考えられる施策をご紹介します。

①.オンライン予約・オンライン順番待ちシステムの導入
クリニック内での待ち時間を減らすことができるため、体調が優れずギリギリまで家で休みたいと考えている患者さんや、感染対策のためにクリニック内での滞在時間を短時間に済ませたいと考えている患者さんなど、あらゆる方への身体的・精神的負担の軽減に繋がります。

②.WEB問診表システムの導入
クリニックに来院してからの記入は、情報を簡略化して記載されてしまう恐れがあるため、医師やスタッフが知りたい情報・知るべき情報を拾えないことに繋がりかねません。また、問診票の記入に時間を取られると、予約通りの順番に影響を及ぼすことも考えられます。来院前に問診表を入力いただくことによって、患者さん方も書くべき情報を落ち着いて書くことが出来ますし、医師やスタッフも情報を収集できるとともに診察前の時間短縮にもなるため、双方にメリットが大きいと考えられます。

③.電子マネーや自動精算機の導入
診察後からお会計を終わらせるまでの時間を短縮することも非常に重要です。お会計で受付が埋まってしまっていると次に来院した患者の受付処理も滞ってしまいます。そのため、スマホでも決済が可能な電子マネーへの対応や、自動精算機を導入することにより、受付・会計周りの回転効率の向上につながります。

スタッフ教育の徹底

クリニックの顔ともいえる受付スタッフや、患者さんとより接する機会の多い看護スタッフの勤務態度・患者さんに接する態度一つ一つは、患者さんからの評価に直結すると考えられます。例えば、ちょっとした対応の際にも笑顔一つで、患者さんからの印象は変わります。また、身だしなみなどの清潔感も医療従事者として非常に重要ですので、雇用時のルールとして設け、周知徹底することをおすすめいたします。

新規開業と継承開業の開業準備について

新規開業とは文字通り、ゼロから新しく医院を開業することです。
テナントでの開業の場合、テナント内装の動線を考え、業者と打ち合わせをするところから始まります。その他にも、院内物品の選択やインフラ・薬品卸など各種業者の選定および打合せ、スタッフの雇用活動などの細かな作業に加え、事業計画書を作成して金融機関から資金調達をする必要もあります。資金については、場合によっては自己資金と借入金併せて1億円以上になるケースも多々見られます。
新規開業では資金が大きく必要になる分、すべての条件において自身の思い通りの開業となる一方で、開業当初から集患に成功するとは限らず、軌道に乗らず苦労するケースも少なくありません。

一方で継承開業とは、患者さんのいる既存の医院を、機器設備や既存患者ごと受け継いで開業する方法です。既に内装や機器などのハード面が導入されているため資金を比較的必要とせず、既存患者がいるため、開業初日からの安定した経営が可能な環境となります。しかし、設備や患者さんをそのまま引き継ぐことになるため、主にハード面での自由度は下がると言って良いでしょう。もちろん継承後に自身の思い通りの設備機器に変更することは不可能ではありませんが、大幅な工事や対応が必要になりますし、また既存患者に満足頂いて継続して通院いただくためには、これまでの既存の診療をある程度受け継ぐ必要も出てきます。

継承での開業を耳にする機会が増えてきた昨今、これから開業をお考えの方は新規開業と継承開業のどちらにするか迷われていることと思います。
その際はぜひ、「地域医療への貢献」という視点もお持ちいただいた上で既にあるクリニックを継承し、患者の声を聴きながら自身の理想と患者の理想をすり合わせながら双方の理想とするクリニックを作り上げていくという、もう1つの開業スタイルもご検討いただければと思います。

継承開業とは?~継承開業のメリット・デメリット~

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