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連載コラム第4弾《開業後の実務 ~継承開業のメリット・デメリット》

  • 医療継承コラム

当社の仲介により埼玉県草加市にある「柳島クリニック」を継承開業された、吉川英志先生に寄稿いただきました連載コラム『クリニックを継承開業した経験から見えた医院継承とは?』より、《開業後の実務~継承開業のメリット・デメリット》をお届いたします。

実際に継承開業された吉川先生ご自身が感じられた重要なポイントを語っていただいておりますので、これから医院継承をご検討される先生にとってご参考になる内容となっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。

開業後の実務 ~継承開業のメリット・デメリット~

令和3年8月17日付で公益社団法人日本医師会会長よりダイレクトメールが届きました。
「有事ではあるが日本医師会も努力をしますので、皆様頑張ってください」と、文脈からもお解りのように、また世間一般も感じていますように、日本医師会上層部と医師会員は必ずしも繋がっておりません。

ただし、開業に当たっては医師会に所属することになり、区や郡市、都道府県そして日本医師会と密接に関わることになります。自治体が運営する健診や予防接種の保健事業などは、医師会を通しての委託事業となるため、これらに関わる場合は所属義務があります。

医師会への入会は開業に先立ち、郡市医師会の承認が必要であり、A会員としての登録が必要です。
郡市医師会長など幹部への挨拶回りなどの根回し、更には理事会での承認と、時間と相当な労力が必要ですので、開業に合わせて計画的に進める必要があります。程度の差こそあれ排他的な地域もありますので、十分に注意してください。

継承開業では、既に医院として存在していた訳ですから、そこは格段に有利ですし、開業予定の先生が継承先で何か月か働くような場合、前もってB会員になっておくなどの対応は、その後のA会員への承認審査に非常に有利であると思われます。
無事A会員となって開業以降も、自治体などから委託を受ける業務の細かな内容や契約(委託単価)などを書面で交わす必要があり、開業時期や委託業務開始に合わせて準備していく必要があります。前の開設・管理者や事務長さんと密に連絡を取ると良いでしょう。医師会によっては、その土地特有の様々な仕事がありますし、入会金も馬鹿になりませんので早めに確認してください。

医院継承では、新規開業と比較してのメリットがありますが、それ故の仕事面での特徴がありますので、少しおさらいしておきます。
医師会入会に有利なのもこれに該当しますが、知名度・広告、ホームページ(HP)、診療時間、経営戦略などに関して説明します。

まず、医院名ですが、継承後当面は名称を変えないことで、継続した患者さんの来院、集患につながります。
医院名は大別して地名主体、人名主体のものがありますが、継承開業では後者の場合いずれ変更が余儀なくされます。一定期間経過後、継承が軌道に乗っての変更が良いでしょう。

HPは広く情報発信と集患に必要なツールですが、安易な作り直しは逆に検索結果の下位への位置づけとなるなど弊害も多く、前医院からの名称変更などとともにHPを作り直す際は、検索上位の前医院のHPから自動的に移行するような対策も必要です。
診療時間の変更は要検討事項ですが、継承開業では職員の継承がある関係上、雇用契約段階での勤務時間の変更が生じるため現実的でありません。
また、経営戦略で新たな診療の追加や、特に従来の診療内容であっても、自費診療の価格設定などは戦略上重要です。インフルエンザワクチンの自費価格などは将にそれですが、戦略的な柔軟性を前提にしての継承が望まれます。

患者さんを継承することのメリットは当然収益に直結しますが、継承開業の場合の多くは収益が良い、すなわち患者さんが多いのが常です。最初は戸惑いますが、特に患者さんの顔と名前の一致に時間が掛かります。病態が関わると意外と記憶に残るものですが、記憶に残るような疾病の発症は暫く避けたいものです。
最初は自身の体力と記憶力が重要ですが、病歴サマリーの作成をお勧めします。それに加え、患者さんの性格、更には裏の性格まで理解できるには半年以上必要でしょう。最初は当たり障りなく精神的にも疲労します。文字通り前の医師のやり方が全てと皆さん来院されます。高齢患者さんが多い場合、中・長期的には入院や死亡、通院困難などで自然減少がありますが、地域医療を目指す先生方は在宅診療の必要性に迫られると思います。この選択は人員を含め大きな転換点になりますので、日頃から念頭におかれると良いです。

継承で有利な点として職員の継承があります。
全く新たに人選しての採用とは異なり確かに有利ですが、勤務が長い職員の給与体系が跳ね上がっているのも確かです。
また、新たに電子カルテやCRなど電子化、デジタル化を図る際には、初期研修、教育が必要になるため、思わぬ抵抗に遭う事もあります。以前からの職員はまとまり易く、同じ方向を向く傾向があり、良い方向なら皆で協力して盛り上げて行こうですが、逆に批判的になり得ます。時間をかけてお互い良い方向性で結束したいものです。
中・長期的には、家庭の事情、病気、職場の人間関係などで脱落する職員も現れますが、その都度頭を悩ませる要因となります。労務は債務返済とともに最も労力を使う仕事です。
特殊事情として、法人への継承や引継ぎと称して、クロージング(経営権移譲)後、管理院長として前院長が継続診療する場合があり、想像するに、譲渡、譲受いずれの側も精神的負担と思います。更に法人の場合、後に別の管理院長の採用もあり得ます。短期の引継ぎ期間は必要でしょうが、あまりに干渉しないような関係での継承が理想です。

設備・機器の継承も初期投資の軽減という点で非常に有利ですが、劣化に伴う修理の必要性などに遭遇し、その都度対処ということになります。
新型コロナ感染症の時期には、特殊事情として必要に迫られる対応もあります。自動ドア、動線分離などへのリフォーム、PCR検査環境、サーモグラフィーなどは、今後も一応検討の余地があります。行政、保健所とは、PCR検査の受託契約や、巡回ワクチン接種(インフルエンザなど)の届け出も必要になり注意が必要です。

この項の終わりに、継承開業でのデメリットですが、以前のやり方が踏襲されるべく、最初は自分を前面に出せないという点ですが、単に時間が解決します。ただ、継承開業に際して客観的目線から現況を見直し、問題点を抽出し、やがて改善に向ける必要があります。
①開業場所:競合、落下傘開業(患者さんを引き連れる開業は理想)、クチコミは患者の民度、
②開業適齢期
③分野はニッチ過ぎないか
④職員:協力的か、変な休暇は精神の疲労
⑤患者:超高齢化、モンスター患者、来院数の極端な波
⑥診療:診療単価、新規慢性疾患患者数など
以上は一例ですし私の偏見もありますが、早期対応が必要な場合もあり得ます。

開業後の真実 ~あるアンケート調査から~

前回第3弾は「開業のすゝめ」と題し勤務医の先生方に発信しましたが、「開業医の意識調査」ともいうべくあるアンケート調査の結果を目に留めましたのでまとめてみます。

① 開業の動機・理由
「勤務医の将来に限界を感じた」がトップで約30%
「地域医療への貢献」「私生活との両立」「理想の医療」が20%
「親族からの勧め」が19%
「金銭的な問題」「経営を含めた遣り甲斐」が18~17%前後
「体力的に」「労働条件」「精神的に」が10%前後で続きます。
およそ予想通りの動機ですが、第三者継承を選択された半数近くの先生方の動機が「将来に限界」であり、「精神的問題」は新規開業の2倍以上と高率で、限界開業の選択肢として多い傾向です。

② 遣り甲斐
開業で遣り甲斐が増したのは新規開業、第三者継承とも5~6割と高く、親族継承や雇われ院長の3割強を大きく上回ります。一方で8~15%はいずれの開業形態でも遣り甲斐が減っています。
内容的には「総合的に診られる」「理想を追える」「個人への信頼を得る」で、外科の先生方はOPに対する不満が残るようです。遣り甲斐で断突に良い科目は形成外科開業です。

③ 収入
勤務医時代より増えたが40%、減ったが21%、増えたという割合が多い科目として、耳鼻科、形成・皮膚科、眼科、精神科が上位です。
ちなみにこの調査対象での勤務医の平均年収は1600万円台、開業医のそれは2700万円台、全体の平均は1800万円ほどです。

④ 勤務日数・労働時間
勤務日数が増えたのは40%、減ったが20%、労働時間は3割強ずつで拮抗しています。科目的には③収入上位の科目での負担が軽減しています。「休暇イコール収入減」「長期休暇が取りづらい」「雑務・医療外の仕事の増加」「医師会活動の雑務」「ON-OFFがある」などの声があります。

⑤ メンタル・体力面
精神的ストレスが増えたのは5割程で、「減った」の2倍以上ですが、体力的には増減が拮抗しています。体力・精神的ストレスが共に多い科目は断突で産婦人科でした。明言されていませんが「コロナ対応」があるかも知れません。以上は開業後の実際を良く反映している結果のように思われます。

その後の展望 (その1) ~医師を取り巻く社会情勢~

① 医師の働き方改革
2024年度から医師の時間外労働に年間1860時間の上限規制がかかります。2035年までの特例ですが、労働安衛法の過労死レベル月80~100時間に比較しこれ程多いのかと思うか、長時間労働では稼げなくなるのか、と考え方は様々です。

② 税制改革
2020年給与(年金)所得控除と基礎控除の加減により医師は実質増税となり、今後は更にマイナンバーカード普及による富裕層、自営業者等への資産課税の懸念が噂されております。

その後の展望(その2) ~医療情勢~

① 診療報酬改定
2022年は新型コロナ感染症の影響から限定的改定に留めるとされますが、目玉は不妊治療の保険適応範囲で、処方箋後発医薬品変更不可欄の要否、電話・オンライン初診や再診の恒久化の件もあり、後者は時限的措置に留めたい旨の要望が多いようです。
2021年の中間年の薬価改定は初でしたが、薬価引き下げの財源は診療報酬改定財源に充てるという慣行も10年来既に崩れ去っており、何が起るか分からないのが常です。

② オンライン資格認定
2021年10月まで実施延期となりました、顔面認証付きカードリーダーによる、マイナンバーカードの保険証代用ですが、失効保険証や返戻の問題、保険証の手入力の省力化という利点の一方、電子カルテやレセコンがネットに繋がる危険性、個人医療情報のビッグデータとしての共有に、むしろ不安が残る政策です。

③ 新型コロナ感染症の影響
2020年4月10日完全初診の電話・オンライン診療が解禁され、再診での管理料147点が加算され、但し10月には電話初診は好ましくない旨の経過を辿りました。
2020年12月15日乳幼児感染予防策加算(医科100点)(10月から50点に)、2021年度医科外来等感染症対策実施加算5点(入院10点)(9月までの時限措置)は前科で、これらにより実質的に小児科、耳鼻科の壊滅を防いでおり、3月年度末までの継続の要請、更には基本診療料への組み込みを中医協に打診していますが、1号(支払)側は当然反対です。また、院内トリアージ実施料300点などもあり、最近8月に自宅・宿泊施設へのオンライン診療等250点が加算可能、また二類感染症患者入院診療加算250点が算定可能となり、初診料214点の2倍強、再診料73点の4倍強と新型コロナ感染症関連はいずれも厚遇措置となっています。

継承開業オーバービュー(まとめとして)

新型コロナ感染症が全世界と医療分野にパラダイムシフトを投げかけ、壊滅的な日本の医療はターニングポイントを向かえております。加えて医師個人の働き方にも改革が及び、私たちは激変の時にあります。どういったビジネスチャンスを画策するかは一考に値しますが、新型コロナ感染症が「新型インフルエンザ等感染症」指定となり、

①2020年2月1日の政令により「指定感染症」に定められる

②2020年3月14日から新型インフルエンザ等対策特別措置法で新型コロナウイルス感染症も対象となるように改正

③2021年2月13日施行の感染症法の改正により「指定感染症」から「新型インフルエンザ等感染症」へ変更

すなわち「一類感染症」の措置である交通制限を含んだ対応が可能となっているのが現状で、将に身動きできない状況です。エポックメイキングな創薬以外では制御不能であり、ウィルスの弱毒化を待って、法的に緩和するしか対策はありません。今は我慢の時です。一過性の熱病への対応は当然大切ですが、中・長期的展望を忘れず何事にも常に備えが必要です。感染症はもとより医院開業への準備もしかりです。それが将に今回のコロナ感染症の教訓であると思います。

 

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