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連載コラム第8弾 失敗しない医院継承

  • 医療継承コラム

当社仲介により埼玉県草加市の「柳島クリニック」を継承開業されました、吉川英志先生より寄稿いただきました連載コラム『クリニックを継承開業した経験から見えた医院継承とは?』より第8弾「失敗しない医院継承」をお届いたします。ぜひ最後までご覧ください。

はじめに~感染症とノーベル賞~

10月4日からの週は今年もノーベル賞週間ですが、先陣を切ってノーベル生理学・医学賞の発表です。ノーベル賞の中でも生理学・医学賞はスウェーデンのカロリンスカ研究所が決定します。自身が助手であった山梨医科大学時代、当教室の恩師田坂捷雄先生、吉田学長、脳外科長沼先生と、腫瘍免疫の権威ロルフ・キースリング博士とのご縁を機に両大学が姉妹(部局間学術交流協定)校となり、田坂先生のご尽力で以前からも当大学の外科系先生方が多く留学されておりました(私は腫瘍免疫を主にやっておりませんで留学しませんでした)。

また、2015年大村智博士のノーベル賞受賞により、山梨大学構内には記念学術館が建立され銅像があります。さて、このノーベル賞ですが、新型コロナウィルス感染症関連ではどうなるでしょう。自らが経験した人類の危機の克服という、科学における人間の英知と努力の結晶を、ノーベル賞という形で生きているうちに目の当たりに出来れば、感無量というものです。

その意味では、過去1世紀以上の人類と感染症の闘いの一端をノーベル賞受賞に見出すことができます。折角ですのでノーベル生理学・医学賞の歴史121年間の受賞で、感染症に関わる、病原体の発見から疾患、治療に至るところをすべておさらいさせて頂きます。記念すべき第1回はジフテリアの血清療法(1901年:ベーリング)に始まります。抗体による受動免疫療法の発見です(因みにノーベル賞以前、ワクチンによる能動免疫による予防はジェンナーの種痘が最初です)。そしてモノクローナル抗体の製法(1984年:イェルネ、ミルスタイン、ケーラー)、受動免疫はより純粋な抗体となり、現在のマブ治療、抗体カクテル療法に繋がります。

病原体の発見では、マラリア原虫(1902年:ロスから1907年:ラヴラン)、結核菌(1905年:コッホ)、黄熱(1951年:タイラー)、ポリオ(1954年:エンダース、ウェーラー、ロビンス)、ラウス肉腫ウィルス(1966年:ラウス)、B型肝炎(1976年:ブランバーグ、ガデュセック)、プリオン(1997年:プルシナー)、ピロリ菌(2005年:マーシャル、ウォレン)、ヒトパピローマウィルス(2008年:ツア・ハウゼン)、エイズ(2008年:バレ=シヌシ、モンタニエ)、C型肝炎(2020年:オルター、ホートン、ライス)と、多くの疾患が予防・治療可能になっていますが、後半はウィルス時代に突入です。感染症創薬分野では、サルファ剤プロントジル(1939年:ドーマク)、ペニシリン(1945年:フレミング、チェーン、フローリー)、DDT(1948年:ミュラー)、ストマイ(1952年:ワクスマン)、アベルないしイベルメクチン(2015年:大村智)、(ジヒドロ)アルテミシニン(2015年:Tu Youyou)、今後C型肝炎とAIDS治療薬に関しては非常に少ない創薬部門でのノーベル賞に関わる可能性がありますし、裏を返せばこれらはワクチンでの予防ができませんでした。

医院継承成功の秘訣

さて今回の本論ですが失敗しない医院継承、譲受(買い手)側の医院継承手続きをおさらい致します。ノーベル賞の対象となる発見には、偶然を見逃さなかったもの、失敗から偶然得られたもの(セレンディピティ)などの逸話がありますが、医院を買うとなると偶然の縁はあるかも知れませんが、そうそう失敗してもいられません。ポイントは以下①、②、すなわち決断力のように思います。加えて③案件の客観的評価であります。医院継承までの過程は後に詳述します。

①良い案件を素早く見つけ

②最初に意思表示する(商談申し込みする)

③その後案件をじっくり見極めて契約する

「良い案件」と契約前に判断できるのは、立地、収益性などの財務、お相手の良し悪しで、実際の「のれん」の内側、例えば職員、患者さん、保健業務自体の良し悪しなどは判断できません。増して継承後の、地域・風土との相性、患者さんや職員との相性、収益などに加え、不可抗力は予想が付きません。新型コロナ感染症の発生・流行による、インバウンドや在宅勤務による都市部人口の激変など、全く予想だにしないことが起こり、現実に道内、都内の医療法人の倒産が始まりました。何に関しましても常に慎重でありたいですが、まずは決断しないことには継承開業は始まりません。

医院継承譲受のプロセス

以下〇で囲ったナンバーは、医院継承専門メディカルプラスさんの初期のコラムでの各項目の説明の番号に一致させておりますので、詳細はそちらの項目をご参考ください。また、一連の継承の流れは、同社のパンフレットならびに「クリニック第三者継承お役立ちガイドブック」に詳しく記載されております。

診療科目、場所、収益などから良さそうな案件を見つけた時から⑩商談申込、これは案件取り扱いの専門コンサルタント、仲介業者への名乗り(個人なら氏名、年齢、専門分野などを明かしての)、最初期の買取の意思表示となりますが、まだどこそこの県の医院くらいしか情報はありませんので、案件に対する機密保持契約を締結した後、⑪ネームクリアとして案件のクリニック名、立地、設備、職員、大まかな収益、譲渡価額などの具体的内容を明らかにしてもらいます。この時点で自身である程度その医院に対して検索が可能となります。ここをクリアし、次の⑫マッチング、すなわち詳細資料の開示(仲介業者との面談となります)、更に先に譲渡譲受双方のトップ面談へと進み、実際の医院の見学などを兼ねて行われます。ここで注意ですが、買取側が一方的に案件・施設を見定めるという立ち位置ではなく、この段階では何組かの競合相手とともに自身の買取意思のアピールの機会ともなりますので、後の⑭基本合意契約の締結に至るまでは条件の良い案件であれば当然競争となりまして、トップ面談は譲渡(売り手)側からすれば後継者の品定めということになります。

これはもはや就活の面談、内定を如何に勝ち取るかといった様相になりますので、十分な準備と共に、自身のアピール、プレゼンの成功が必須となります。その後、⑬譲渡条件交渉を、お相手とは内密に仲介業者・コンサルタントへ申し送る機会が与えられており、ここでは、今後の交渉においてこれだけは譲れないこと、譲渡価額の上限などの懐事情や、お相手の暫くの期間の診療時間の制限など妥協可能な部分など、相互にお相手に直接話しずらいことをコンサルタントに託し、双方向の調整をして頂きます。実はここが、医院継承の最も重要なところであり、コンサルタントの腕の見せ所である訳です。そして、いよいよ⑭基本合意契約を締結し買い手側の独占交渉権の獲得、すなわち一人の医師が買い手候補に絞られ、一定期間売り手側は他の誰とも当該医院売買に関する交渉は出来なくなり、前述の譲渡条件の交渉の実現を経て、その後のステップへの進展が許諾されます。ここからは、ほぼレールに乗った手続きであると私自身は思っております。この基本合意契約をもって仲介業者への着手金が生じる場合がありますのでご確認ください。

マッチングで譲渡譲受双方が求め求められるもの

トップ面談では前もって質問事項などが提示され準備期間が設けられることもありますが、面接同様のぶっつけ本番的要素があります。質問内容は、履歴・職歴、スキル、志望動機、将来の方向性、居住・家族・相談相手などは定番ですが、自身が面接する側される側を通して、医師は履歴を細かく問わない傾向があります。また、お互いのフィーリング、これは個々に好みがありまして、情熱ややる気十分、一方でソフトな感じや懐の深さが好印象であることもあり、最低限求められるスキルと誠実さなどの人柄、何よりも最初に継承の意思表示をした先生、ということで継承対象が絞られることも少なくないように思われます。反対に譲受側も、継承案件よりもお相手の先生の人柄で継承を決めたなどという場合もあるようです。

譲渡条件交渉でも、資金力は当然有利ですが、お金を積めば継承が可能かというと決してそうではありません。そこら辺りの仲介での親身さが問われるのが仲介業者、コンサルタントの良し悪しであると思われ、あくまで人と人とのマッチングであると理解されます。

買収監査(デューデリジェンス)

⑮デューデリジェンスは買い手の依頼する専門家士業が、案件の財務、税務、法務的監査、精査、評価を行うものですが、医院継承専門業者の仲介する案件はほぼこれらの部分をクリアしており問題無いでしょう。この作業は寧ろ、友人知人、家族親戚からの継承時に応用すべきと私個人は考えております。親子といえど信頼できない、そんな家族間継承につきましては今後の連載コラムにご期待ください。なお、監査では士業への報酬の支払いが必要になりますのでご確認ください。

最終条件交渉から最終契約締結

⑭基本合意契約からの過程で問題が無ければ、1か月程の期間を経て法的拘束力の発生する最終契約の調印へと進みます。この間、⑮買収監査を含め案件の財務状況は問題無いでしょう。最終契約に盛り込む、譲渡価額、振込日や口座の詳細、リースの引継ぎの有無、機密開示の許諾時期、クロージングの日時などの細かな部分である⑯最終条件交渉を経て⑰最終契約締結となります。この契約締結をもって、仲介業者への仲介手数料(成功報酬)が発生しますので、連載コラム第6弾もご参考頂き、この点の確認をしておいてください。

失敗しない医院継承のために

以上のように、⑩商談申込から⑰最終契約締結まで慎重に慎重を重ね、医院継承が現実化しました。お解りの通り経営、財務、税務は「のれん」を含めて問題ないですが、最後の⑱クロージング(経営権移譲)までにはまだ少し期間があります。この時期、機器リースに伴う買い替えで多大な出費を要する可能性もありますし、職員を継承する場合(医療法人は別)、個々の職員との間に雇用契約(労働条件通知書)の調印をしなければならず、職員間のトラブルが明るみに出る、あるいは職員都合で雇用の継続雇用ができない場合もあり、新規職員の募集を余儀なくされることもあり得ます。そういう意味では、保健部分である厚生局・保健所関係の運営(連載コラム第2弾を参照)も含め「のれん」の中は完全には見えておりません。特に患者さんに関してはほぼ情報がありません。継承後になってgoogle の口コミに、院長が替わって医院がここまで凋落するとは思わなかった、などと記す患者さんが存在するかも知れません。そこら辺りは継承開業ではある程度避けて通れないものと理解しておく必要があります。以上を踏まえ、納得できる部分とそうでない部分を自身の中で整理しておくのが良いと思います。100%において満足できるものは決して継承で譲り受けることはできないでしょうし、不完全な部分はクロージング後の遣り甲斐と開き直って医院継承した方が良いようにも思います。

以上、私の連載コラム第5弾から第8弾まで、医院第三者継承の一連の流れ(手続き)と共に、それにまつわる「ヒト」や「カネ」などにつきまして、医師の視点からのポイントをおさらいしたつもりです。皆さまの今後に少しでもお役に立てる内容が含まれていましたら、この上なく喜ばしい限りであります。

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連載コラム第2弾 《医院運営の三本柱》#1

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連載コラム第4弾《開業後の実務 ~継承開業のメリット・デメリット》

連載コラム第5弾 開業医が廃業前にすべきこと ~医院継承の実際~

連載コラム第6弾 医院譲渡の際の収入と費用

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柳島クリニック 吉川英志先生 医院継承インタビュー

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